「生活犠牲に、直接欲しい」 県内・消防団報酬、個人に渡らず

2020/10/31 13:46

 県内の消防団で、本来は行政から個人に支給されるはずの報酬や出動手当が十分に行き渡らず、全35市町村の6割に当たる21市町村で分団や部、班が管理し、各組織全体の収入として使われていることが山形新聞の取材で分かった。行政事務の簡素化などが主な理由で、懇親会に使われているケースが多い。消防団員の減少による地域防災力の低下が問題視される中、団員からは「生活を犠牲にしている。報酬は直接もらいたい」と切実な声が上がっている。

 行政や消防署に対する調査結果は別表の通り。個人支給と回答した尾花沢市や庄内町など複数自治体では「最終的に個人に渡っている認識」とするが、確認するシステムはないという。

 分団や部、班が管理している自治体では使途は懇親会が多く、一部ではコンパニオンを招くために使われている可能性も指摘されている。このほか、町から支給のない靴や訓練時の飲み物の購入(山辺町)、備品や出動時の軽食(舟形町)などがあった。大半は、分団や部や班が管理することを了承する委任状を団員が提出している。一方で、行政が使途を把握していないケースも目立った。

 行政対応の多くは「消防団は独立した機関」(消防組織法逐条解説)を根拠にしているとみられるが、消防庁は「その部分は現場活動を指すもので、論点が違う」と指摘。「市町村は当該市町村の区域における消防を十分に果たすべき責任を有する」(消防組織法6条)との観点から「経費はしっかり行政が管理しなくてはならない」との見解を示している。

 若者の酒席や地域行事に対する価値観が変わる中、団員たちの思いは複雑だ。町と消防の担当者が「個人に行き渡っている」とする高畠町消防団の団員は「(班によって対応は異なるかもしれないが)自分はもらっていない。報酬や手当がもらえることすら知らない団員も多い。一方で数合わせの『幽霊団員』が実際にいる。同じ額が支給されれば、他の団員の士気は下がる」と話す。

 白鷹町の団員は「報酬がどう使われているか、団員に具体的説明はない。本来は個人でもらえるものをもらえず、使い方を決められてしまうのは納得できない部分はあるが、それが当たり前になっている」と吐露する。

 庄内町の団員は「報酬が個人に支払われなくても『そういうもの』だと思っていた」としつつ、「(本来は個人に支払われるべきものと聞き)今までの運用はグレーだと感じている。何十年も続いてきた慣習になってしまっている」とし、支給方法の是正を求めている。

【消防団】 地方公務員法で非常勤特別職の地方公務員に位置付けられる。総務省消防庁地域防災室は報酬や手当(出動、訓練)について、「個人に支給されるべきであり、適切に支給すること」との通知を年に1度程度都道府県に出し、市町村への周知を促している。通知の背景には、災害の多様化や団員減少による地域防災力の低下などもあり、消防団の加入を促進する狙いがある。活動中に死亡、負傷などした場合には、公務災害補償が受けられるほか、退職した際には功労金的性格の退職報償金が在職年数、退団時の階級に応じて支払われる。

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