残る大量の泥、来春にも不安 7月豪雨3カ月~稲刈りできぬまま

2020/10/28 10:07
小松繁さんの田んぼにたまった泥には大きな亀裂が走っていた。その深さは約25センチ=河北町溝延

 最上川などの氾濫をもたらした記録的大雨から28日で3カ月となる。県のまとめによると、現時点で農林水産関係の被害は125億円超に上る。被災した村山市や河北町の田んぼには大量の泥が堆積したまま残り、農家からは「稲刈りができない」と嘆きが漏れる。土砂撤去の見通しは不透明で、来春の作付けも危機的状況だ。「また同じ被害があれば営農できない」。被災農家は厳しい実りの秋を迎えている。

 秋が深まっても、河北町溝延には稲が刈り取られず残る田んぼが点在する。7月豪雨で泥が入り生産者が収穫を諦めた場所だ。泥を取り除く工事が必要だが、冬が迫る。農家からは「来春に田植えはできるのか」と心配する声が聞かれる。

 田んぼ、果樹園地などを含め計325ヘクタールの農地が冠水した同町では、田んぼのうち約85ヘクタールで泥撤去が必要で、無堤区間がある溝延ではそのうち15.6ヘクタールが対象となる。専業農家の小松繁さん(64)は田んぼ1.5ヘクタールの約4分の3を収穫しないと決めた。たまった泥は厚さ約25~30センチ。「中には石や木もある。コンバインの部品が壊れるので刈り取りは難しい」。見詰める田んぼの表面には大きく深いひびが入り、泥の深さを物語る。

 同じく専業農家の高橋仁さん(61)も田んぼ3.8ヘクタールのうち大半の収穫を諦めた。農機具も水没し使えなくなり、中古のコンバインを購入。だが無理に収穫するより、予定収量の7割以上を補償する農業共済の制度を利用することにした。小松さんも同様だ。

 泥が多く入った田んぼは表面が用水路と同じか高くなり水がためられない。町は生産者の費用負担が少ない方法を模索し、土砂撤去の準備を進める。災害復旧に向けた国の査定は11月11日で、従来の工程なら工事は12月中旬以降の見込み。だが田んぼに雪が積もれば工事は難しくなる。「来年に作付けできるのか不安だ」と小松さん。町総務課では「工事が早く発注できるよう検討したい」と話す。一方で高橋さんは「若い生産者のためにも、堤防建設が絶対に必要だ」と実感を込めた。

どこに運べば・大久保遊水地

大久保遊水地の田んぼでは泥が堆積し、水路より高い所では稲作が不可能となった=村山市

 村山市と河北町にまたがる大久保遊水地は7月豪雨の際に満水となり、下流域の被害を低減した。一方、堤防のない流域から大量の泥が流れ込み、場所によっては30センチ近く積もった。

 村山市西部土地改良区によると、遊水地となっている田んぼ約200ヘクタールが冠水。2昼夜水に漬かった所は品質が悪く、収穫せず取り除いている。泥の量は10万立方メートルと想定され、泥を重機で剥ぎ取り元の高さに戻せば農地利用できるが、斎藤勝事務局長は「大量の泥の運び先を探さなければならない」と苦悩する。

 市の災害復旧事業だが、広範囲で大規模のため来春まで間に合わない場所もある。同改良区の高谷太(はじめ)理事長は「遊水地だから水害に遭っても仕方ないと思われるが、われわれにとっては大事な農地」と話す。復旧には農家にも金銭的負担が伴う。また近年増える豪雨被害について「復旧してまた何年か後に同じ被害があれば、地元農家の生産意欲がなくなってしまう」と恨めしそうに語った。

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