ふるさと山探訪(12) 高畠町・豪士山

2020/8/8 22:15
下山途中、麓に着く頃、ようやく視界が開けてきた

 福島県との県境付近に位置する高畠町の豪士山(ごうしざん)(1023メートル)は、凜(りん)としたブナ林が残り、いくつもの沢が山に生きる命を育んでいる。それらはやがて砂川を織りなし、古くから麓の和田地区の田畑を潤してきた。そんな“水の聖地”に7日、入った。

 登山道は何本もの沢沿いに整備されている。1000メートル級の山にしては、沢の数は多く、水量も豊富だ。そのゆえんは「緑のダム」と称される豊かなブナ林にある。一時は木材加工業者による伐採に揺れたが、地区住民が「ぶなを守る会」を結成し、伐採権を買い戻した。町民の愛情が水資源を守り、周囲の生態系を後世へと引き継いでいる。

 水資源の豊富な豪士山には多くの生命が宿る。案内役を務めてくれた「豪士山(ごうしやま)の会」の土屋喜平副会長(65)は、大柄な体はいかにも山男ながら、穏やかな口調でいろいろな話を聞かせてくれた。

 本沢沿いのコースを選び、麓から登りだす。ブナ林がため込んだ雨は、地面にゆっくり浸透し、沢に流れ出る。その水面にイワナの魚影が光った。

 「何年も行ってないんだけど…」と土屋さんが切り出した。この山には幻の滝とされ、知る人ぞ知る「不動の滝」があるという。しばらく登ると、沢が二手に分かれる。急斜面を登るが道はなく、土屋さんがなたとのこぎりで切り開いていく。

 20分ほど進んだところで、落差100メートル以上はあろうかという巨大な瀑布(ばくふ)が現れた。古い道の断片が数カ所確認できたが、通れる道はなく、近づくことはできない。土屋さんは「地元の子供たちに見せたいんだよな」とつぶやいた。

 頂上付近はあいにくのガスで視界がなかったが、晴れなら四方に米沢市や高畠町、宮城、福島両県が見渡せる。さらに条件が整えば飯豊や朝日連峰も見えるという。また登る理由ができた。

 ◆豪士山(ごうしざん) 江戸時代に雨乞いの神様として奉られた摺上(すりかみ)神社(福島県福島市)から続く道が奥羽山系の尾根と合わさる「合子」が名前の由来と伝えられている。ただ、呼び名については諸説あり、「『合』が会う、『子』が人を意味し、周辺でよく人と会うから」「豪傑な人(山賊)がいた」といった話も残る。江戸時代などは盛んに往来のあった通りだが次第に古道と化した。豪士山の会のメンバーが周回ルートを確立し、毎年手入れを行っている。

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