ごう音、一気に泥水 最上川氾濫・県内5市町村ルポ

2020/7/30 11:49
最上川が氾濫し広範囲に浸水した大蔵村清水の白須賀地区=29日午後0時8分(小型無人機ドローン使用)

 最上川があふれ、住宅街や田畑を容赦なくのみ込んだ。記録的な豪雨から一夜明けた29日、県内の至る所に河川の氾濫・越水による家屋の浸水や道路の冠水、土砂崩れなどの深い爪痕があらわになり、住民らが対応に追われた。同日未明から午前にかけて、大石田、大蔵、大江、村山、中山の5市町村の被災現場を取材した。

【大蔵】道路寸断、住民ら孤立

 見慣れた景色が一夜のうちに豹変(ひょうへん)した。大蔵村の役場や学校が集まる中心部に近く、最上川を挟んだ対岸の白須賀地区。濁流と化した母なる川が堤防を越え、住民の生活空間に一気に押し寄せた。橋の上や高台に立つ人たちは、いつ収まるともしれぬ流れをじっと見詰め、言葉を失った。

 同地区の氾濫情報を受け、29日早朝、新庄市から現場へ向かった。最上川に架かる大蔵橋は規制され、通れない。対岸に回るルートを選んだ。地元JAの支店や住宅、道路はすっかり泥水に漬かっていた。床上浸水した自宅のそばにいた男性(79)は「一睡もせずに家を片付けていた」。午前3時ごろに堤防を越える濁流の音を聞いたという。「表現しようのない、ものすごい音だった」と表情をこわばらせた。

 土砂崩れで一時、道路が寸断し、住民らが孤立した同村の肘折温泉。大きな浸水被害に遭った旅館はなかったが、床上浸水した温泉施設「肘折いでゆ館」では一夜明け、従業員らが泥かき作業に追われた。八鍬晃支配人(58)は「手作業でやるしかない」と汗をぬぐった。

 新庄市本合海でも最上川の水があふれ、畑(はた)地区の住民を中心に影響が出た。

一夜明けて雨が上がっても浸水が続いていた中山町あおばの住宅街。茶色く濁った水が川に向かって流れ出ていた=29日午前11時44分

【中山】引かぬ水、想定外の被害

 最上川の支流・石子沢川に近い中山町あおばの住宅街は、一夜明けて雨が上がっても茶色く濁った水に覆われていた。低地では29日昼ごろになっても膝上の高さまで浸水し、車の出入りは困難な状況が続いた。

 目の前を川が流れる村山とみよさん(65)方は床上まで水が上がり、和室の畳などが水浸しになった。町は28日に避難指示を上回る「災害発生情報」を発令。増水に不安を感じた村山さんは、家族とともに避難所で一夜を過ごした。朝になり腰まで水に漬かりながら家に戻ったが、水が引かなければ片付けも思い通りに進まない。想像を超える被害に驚いたが、「家族が全員無事でひと安心。今日のうちに何とか寝られるようにしたい」と気丈だった。

 あおばのコンビニエンスストア近くの交差点には、動けなくなり立ち往生した車が残されていた。近くの男性は「こりゃあひどい」と一変した景色を前に立ち尽くし、目頭を押さえた。

【村山】車水没、高齢女性を救助

 最上川から約2キロ離れた村山市中央2丁目付近。市内を流れる大旦川と大沢川の水があふれ、大規模に冠水した。28日午後7時すぎから道路に水が流れだし、29日未明からさらに水位が上がった。

床上浸水した自宅を見詰め、住民が座り込んでいた=29日午前10時40分、大石田町新町地区

 地域密着型特別養護老人ホームむらやまでは、28日夜から1階にいる入所者8人を2階に垂直避難させた。しかし、29日朝に水が迫り、午前8時すぎから市消防本部の協力を得て全入所者28人を市内の別の施設に移動させた。大山健施設長は「毎年訓練をしていたが、ここまで水が来るとは思わなかった」と驚く。

 近くの道路では通り掛かった乗用車が水没し、市民が高齢女性を背負って救助していた。周囲には多くの事業所が並ぶが、水が引かず営業できない状態だった。

【大石田】暗闇の中、決壊の恐怖

 大石田町内を流れる最上川は29日午前2時半ごろ、氾濫危険水位を1.5メートルほど超えていた。水量は町のシンボル、大橋の橋桁すれすれ。両岸には住宅と商店が連なる。暗闇に濁流がうねり、決壊という恐怖を感じさせた。

住宅に入り込んだ多量の泥を家族ら総出で運び出していた=29日午後0時54分、大江町左沢

 堤防は持ちこたえたが内水や支流があふれ、川端地区や今宿地区の住宅は浸水した。川端地区の松沢由夫さん(72)は「ここまで最上川の水位が上がったのは見たことがない」と驚いた様子で語った。

 午前4時ごろ、ボートを積んだ消防車両が豊田地区に入ってきた。水位は腰の高さに達している。住民3人がボートで救助された。その1人、芳賀功さん(85)は「ドバドバと音がして目が覚めた。外を見たら周りが水浸しだった」と声を震わせた。

 浸水した新町地区は排水が進まず、夕方になっても水は引かない。今宿地区の60代男性が浸水した自宅を見てつぶやいた。「こんな状況は堤防が出来てから初めて。雨の降り方が今までと違った」

【大江】再び浸水「もう住めない」

 最上川に面し、氾濫により計15戸が高さ最大約2メートルまで浸水した大江町左沢の百目木(どめき)地区。周囲からおおむね水が引いた後、住民は29日朝から泥かきに追われた。

 厚さ20~40センチの泥は重くかき出す表情には汗と疲れがにじんだ。町道の泥撤去には除雪用ブルドーザーも使われた。「今も少し怖くて心臓のドキドキが止まらない」と主婦佐竹久子さん(72)。玄関の頭上電灯には泥水がたまり浸水規模の大きさを物語る。周辺には堤防がなく「やっぱりほしい」とも語った。

 最上川から約5メートルと近い会社員後藤洋子さん(60)方は1階が水没。昨年の台風19号では床下浸水した。濡れた家具を運び出す手を休め「何十年に一回と言われる被害が毎年のように起こる。もうここには住めないと感じる」と無念そう。

 正午ごろには各住宅前の泥はだいぶ減った。それでも「固まる前に片付けないと」と会社員鈴木昭人さん(57)は作業を急いだ。

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