新型コロナウイルス感染が4日に判明した大蔵村の特別養護老人ホーム「翠明荘」職員の20代女性(同村在住)について、県は5日の記者会見で、既に感染が分かっている新庄市在住の30代女性の同僚と明らかにした。30代女性は、同市で最初に検査で陽性とされた60代男性と同居する息子の妻で、県が「家族内クラスター(感染者集団)」との認識を示した感染は福祉施設の関係者に拡大した。
県の発表によると、この20代女性は新庄市の女性と同じ入居棟で働いており、3月29日には施設内の休憩室で一緒に昼食を取っていた。夜勤明けの31日にのどの痛みがあり、その後は自宅にいたが、味覚障害などが出たため4月3日に医療機関を受診。4日のPCR検査の結果、陽性と判明した。
翠明荘は2日からデイサービスなどを休止している。入所者78人と職員70人がおり、このうち女性が担当する棟の入所者48人、担当職員29人の計77人について6日以降、PCR検査を順次行う。
一方、同じく4日に感染が確認されたヤマト運輸南陽支店の配達業務担当の男性(上山市在住)は3月30日まで通常通り勤務し、同日の業務終了直前に体調が悪化、夜に39度台の発熱などの症状が現れた。この日は南陽市を中心に約90件の配送を行ったという。31日から勤務を休み、4月1日には40度台の発熱などの症状が出た。4日にPCR検査を受けて陽性と分かった。
男性は東京都在住と県内の友人の計3人で3月26日、山形市内の居酒屋で会食していた。県は「友人を介した感染の可能性は否定できない」とし、県内の友人と男性の家族3人を対象にPCR検査を行った。東京の友人に関しては都内の保健所に検査を依頼した。
予防策徹底実らず-大蔵・翠明荘「利用者に申し訳ない」
職員2人の感染が確認された大蔵村清水の特別養護老人ホーム「翠明荘」の信田(しだ)春夫荘長(65)は5日、山形新聞の電話取材に「安全管理を徹底していたが、利用者やその家族に迷惑をかける結果となってしまい、申し訳ない」と話した。
外からは施設内で作業する職員の姿が見え、時折、人が出入りしていた。感染が判明した2人の女性はともに介護職員で、日常的に入所者と接していたという。信田荘長は、国の通知や県の指導に従い、入所者と接する際の手洗い・うがいやマスクの着用などを徹底していたとし「感染流行地への外出を避けるなどの呼び掛けも行っていたのだが…」と無念さをにじませた。
特養ホーム支援「村を挙げ対応」-大蔵村長
大蔵村の加藤正美村長は5日、村役場で記者会見し、職員2人の感染が判明した特別養護老人ホーム「翠明荘」に対し、「要望があれば村を挙げて対応したい」と支援する考えを示した。
村民の感染防止策として、10人以上が集まる村主催の会合を5月末まで中止するとした。集落単位の祭事も同様に見合わせるよう協力を求める。加藤村長は「小さな村だからこそできる小回りが利いた対策を進める」と述べた。
「感染、自分は大丈夫か」-ヤマト運輸南陽支店
配達業務などを担当する社員の感染確認を受け、ヤマト運輸は5日、南陽支店(高畠町深沼)の窓口業務を当面休止とすると発表した。支店前には張り紙が掲示され、訪れる利用者は困惑しながら、次々とUターンしていた。
同社広報によると、南陽支店の管轄は赤湯や椚塚、二色根など南陽市の一部と高畠町全域。派遣社員を含めて42人が勤務しており、うち22人が配達などを行うセールスドライバー。他は事務や仕分けなどに従事している。5日から全員を自宅待機とし、健康状態の経過観察を行っている。
支店内は4、5の両日、保健所の指導で消毒を行い、6日以降も作業を継続する。5日以降の荷物の受け付けは近隣の南陽宮内センター、米沢花沢センターで対応する。
同支店に先月末、荷物を受け取りに行ったという高畠町内の60代男性は「自分が感染していないか不安で仕方ない」。40代男性は「感染したドライバーが誰か分からないので疑心暗鬼になる。会社側には感染者の配達エリアなど詳細な情報を出してほしい」と語った。
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