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老舗の最後、唐突に 大沼破産・従業員、営業後に解雇通告

2020年01月28日 07:54
27日に自己破産を申請した大沼の山形本店。最後の営業を終え、従業員が正面入り口を施錠した=26日午後7時、山形市七日町1丁目
 県内唯一の百貨店「大沼」が320年の歴史に終止符を打った。最終営業日となった26日夜から破産申請された27日午前にかけて、山形市の山形本店や米沢、新庄両市の店舗で従業員、取引業者、買い物客の衝撃を追った。

 26日午後7時、夕闇の中の山形本店は凍(い)てつく空気に包まれていた。最後の客を見送った女性従業員が営業終了を知らせる立て看板を置き、正面入り口を施錠した。同18分、シャッターが降りる。普段は30分もせず従業員が次々と帰路に就くが、この日は違った。

 姿を見せたのは午後8時すぎ。表情はいずれも険しい。営業終了後、長沢光洋代表取締役から、この日での事業停止と社員の解雇が伝えられていた。静まり返った正面とは異なり、裏手ではテナントスタッフらが慌てた様子で食品やチョコレート箱が入った段ボールを車両に積み込み、商品で膨らんだバラのマークの紙袋を抱えるようにして運び出していた。

 27日も夜明け前から多くの取引業者らが詰めかけ、午前7時に館内に入った。業者の男性は「昨夜、急に集められ、閉店の方針を伝えられた。生鮮品は朝の2時間で運び出すように言われた」と疲れた表情。大沼の一部従業員は残務処理のため出社した。女性従業員の一人は「展開が急過ぎて何も言えない。せめて応援してくれたお客さまに誠意ある形で終えたかった」と落胆を隠さない。別の女性は「もう百貨店で働けないことが悲しいが、時代の流れ。仕方がない」。

裏手の搬入口で自社の商品を運び出す業者ら=27日午前7時9分
 午前9時前、シャッターなどに事業停止と破産申請の告示書が張り出された。近くの事務所に勤務する男性(40)は「地下の食品売り場をよく利用していた。街のシンボル的な存在で影響は大きい」と老舗の閉店を惜しんだ。商店街の婦人服店に勤める女性(42)は「大沼で催事があると商店街の人出が増えた。閉店は他店にも影響すると思う」と心配した。七日町商店街振興組合の岩淵正太郎理事長は「あって当たり前だったものが無くなるのは非常に残念。今はそれしか言えない」と言葉少なだった。

 米沢市の米沢サテライト店前でも朝から通行人らが足を止めた。近くに住むパート従業員の女性(47)は「若いころは洋服などを買ったが、最近はあまり魅力を感じなくなっていた。無理して営業を続けなくて良かったと思う」と張り紙を見詰めた。新庄市のギフトショップ新庄店前。「友の会」の会費を払うために来店した70代女性は「閉店は知らなかった。山形からデパートが消えるのは本当に悲しい」と残念がった。

【大沼を巡る主な経過】
2017年12月25日 ファンドと大沼旧経営陣が経営支援に関する覚書を締結
2018年4月23日 100%減資し旧経営陣が退任。ファンドが3億円を出資し大沼を100%子会社化。ファンド社長が大沼社長に就任。ファンドが仮払金名目で1億1800万円を自社に還流(その後一部返済)。大沼の再生資金残金は4100万円に
   4月25日 米沢店が一部リニューアル
   5月21日 長沢光洋氏が社長就任
   7月ごろ ファンドの経営難で仮払金返済、追加投資が実行されず資金不足に
   9月20日 長沢社長を解任しファンド社長が大沼社長就任
2019年2月19日 金融機関会合を機に再建の遅れが表面化
   2月20日 山形市長、山形商工会議所会頭らが緊急記者会見を開き、市民に買い支えを呼び掛け
   3月22日 大沼投資組合が投資会社から債権譲渡を受け、ファンドに代わる親会社に
   8月15日 米沢店が閉店
   9月30日 永瀬孝社長が退任し、長沢氏が再び経営トップに
   10月下旬 取引先への支払いに窮したものの資金ショートを回避
   11月22日 県警の制服などの入札で談合したとして、公正取引委員会が立ち入り検査していたことが明らかに
2020年1月27日 取引業者500社への支払い資金約4億円を調達できず、自己破産申請。手続き開始決定
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