昔、余目の深川さ(※)金沼神社あって、そごさ金沼といって底なしの深い沼あって、竜が住んでいだけど。
この竜、毎年大風、大雨降らして
田畑荒らしていだけど。困った村の
衆、竜暴れねよう毎年きれいだ娘1人、竜さ嫁やるごどしたけど。そえがら
田畑荒れなぐなったけどや。
んだども、村では毎年娘を竜さやらねばならねさげ、娘のいる家はビグビグていだけど。ある年、長者の家の屋根さ白鷺飛んできて止まったけど。その白鷺の止まった家の娘は、竜の嫁なる決まりだけどや。長者は困って、別の娘を竜にやろうとしたども、娘は「決まった以上は、おれが行ぐ」て、お経の巻物ふとごろさ入れで、夕方たった1人で金沼さ行ったけど。
沼の前で、きれいだ声でお経読み始めだけど。夜中ごろなったば、沼の水波立ってきて竜出はってきたけど。そして娘の方さひとのみする気で近づいできたけど。そえでも娘の前さ来るど、急にピタッと止まってしまい、黙ってお経聞いでいるけどや。
娘、お経読み終わるど、お経クルクルと巻いで竜の頭めがげでバッと投げだば、竜の頭さ当だったけど。したば竜、急に苦しがって口から火吐ぎながら雲さ乗って、西の金峯山さ逃げでいったけど。そのうず夜あげで、娘は無事家さ帰り、田畑は荒れなぐなったけどや。トンピンカラリネッケド。