昔、余目のある寺さ和尚と小坊どいだけど。小坊、利口だ子だども、悪り癖あって何か言うど、その後さ「(※)しっつぼ」てつけんなだけど。ある日、和尚「これ、小坊や」て言たば
「はえ。和尚さまなんだぞし。しっつぼ」
「それ、まだ『しっつぼ』て言た。今度言たら勘当すっど。分がったが」
「はえ。分がったぞし。しっつぼ」
「それ、まだ言た。おめみでだ小坊は寺さ置がんねさげ、すぐ出でいげ」て小坊、寺から出さえだけど。
(※)廻館まで来たば、日暮れできて小坊困ったば、めっこ茶屋のばあさま声かげでくれだけど。
「小坊ちゃどごさ行ぐ」
「おれ行ぐ所ねなだ。しっつぼ」
「そごさ空ぎ寺あっさげ、泊まったらどうだ。化げ物出はるうわさあんども」
「それはありがで。そごさ行ぐ。しっつぼ」
小坊寺さ来たば、化げ物出はるようだ寺だけど。小坊、暗い本堂でお経読んでいだば、天井の方で音して、(※)ふぐら雀の何層倍の化げ物、小坊どご見っだけど。そして長げ手のばして小坊どご鷲じかみしたけど。
小坊「なんだこのやろ。しっつぼ」てかがっていったけど。したば、化げ物外さ逃げで(※)肥塚の後ろさ隠っだけど。小坊(※)ぼっかげでいって、ここらだて思う所、稲杭でワチワチど(※)くらしづげだば「ポン」て大き音して急に静がなったけど。
次の朝ま、小坊、村の衆ど見い行ったば、大き酢壺、真っ二づえ割っで転がったけど。トンピンカラリネッケド。