昔むがし、山形と秋田との国境の鳥海山さ手長ていう鬼いでの、手足の長さ人の2倍もある鬼で、ふもどの村さ出で、子供さらったり田畑荒らしていだけど。
村の衆達、鳥海山の神様さ「助げでくれ」てお願いしたば、3本足の鳥よごしたけど。その鳥、鬼が鳥海山の頂さいる時は「むや(鬼はいない)」て鳴いで教えで、鬼が村さ出はった時は「うや(鬼いる)」て鳴ぐけど。村の衆は「むや」て鳴ぐど外で働ぎ、「うや」の時は家さ逃げだけど。
そえでも鬼は田畑荒らしはやめねし、家の中まで入ってくるさげ、みんな困っていだけど。その時、京都から慈覚大師ていう偉い和尚さま、旅の途中こごさやって来たけど。そして村の衆を助けるため、(※)吹浦で(※)不動明王を前にして百日間、火をたぎながらお経読み続げだけど。
ちょうど百日めの朝、火が急に強ぐ燃えで、不動明王の目がらいなずまのようだ光、鳥海山の頂上さ飛んでいったけど。そしたばバーンと大き音して、頂上が海の中さふっ飛ばさえでしまったけど。頂上さいだ手長足長の鬼も死んでしまったけど。日本海にふっ飛んだ鳥海山の頂上が、今の飛島だそうだ。
それがら村の衆は安心して外で働げるようなったし、その辺の関所を「うやむやの関」て言うようなったけどや。トンビンカラリネッケド。