むがしあったけど。じさまは毎日山さ行って、山の畑さ豆蒔いだり、蕪引ぎ抜いだり、柴切ったりして働いだもんだど。
その日は暑がったがら、滝の下で水を手で受げで飲んだら、その水のうまいごど、天国さ行ぐみたいな気持ぢになるんだど。滝の上の水は別に変わったものでないのだげんども、そごに立ってござった地蔵さまの鼻がら、ポタリポタリ落ぢ出る鼻水の香りが、うまい水になるんだけど。
「ああ、もったいない。尊い地蔵さまだ。んじゃ、家さ背負って行って、祭っておぐべ」て、家さ持ってきて、奥の間さ祭って、大っきなどんぶりに、地蔵さまの鼻水を集めて、山がら戻ってくっど、どんぶりの水を1杯飲むのだど。「どうもこのごろ、じさま、2つも3つも若ぐなったみだいだ。何があるな」て、ばさまそっと奥の間さ行ってみだら、ええ香りするもんで、どんぶりの水を甜めでみだら、急に2つも3つも若ぐなったような気になったもんだがら、みな飲んでしまったんだど。
帰ってきたじさまは、地蔵さまの前に、ばさまも座らせで、「おらが、(※)こんげにうまい水を1人じめでしまって悪いな」と言うたら、ばさまも滝の地蔵さまどさ行って、もっと出るようにと、鼻の穴、大っきぐしようとしたから、出なぐなったんだど。地蔵さまは、「こんどは年寄り喜ばせんのはやめで、子どもを喜ばせるごどにすんべ」て言ったど。とーびんと。