昔鶴岡の金峯山のふもど流れる青龍寺川の脇さ茶屋あって、はやっていだけどや。こごのじいさん、天王様(八坂神社)さ初きゅうり納めるため、川近くの畑さ、いつもきゅうり植えでいだけど。
ある年の夏の夕方、きゅうりもぎ行って見だば、大っききゅうりみんななぐなったけどや。2、3日後、まだ行って見だば、やっぱりきゅうりなぐなったけど。じいさん「(※)歯がいちゃ。だれとっだが(※)しめでやる」て次の日の夕方、畑のはずれさ隠れでいだけどのう。
したば、畑の中の方がらガサガサって音しっけど。じいさん、ソッとそっちの方さ行って「だれだ、きゅうりドロボーは」て言ったばそのドロボー、こっち向いだけど。その面は頭に皿、光る黒い目、とがった鼻のカッパだけど。
そのカッパは、急に頭ペコペコさげながら、じいさんの前さ来て「どうが許してくれ。おれはこの川のカッパだども、きゅうり大きらいで匂いだげでも死ぬようだ気する。んださげ、きゅうりだげは植えだり、川さ流さねでくれ。その代わり、子供の(※)川流れはねえようするがら」と頼むけど。
じいさん、(※)めじょけなぐ思って、「よし分がった。きゅうりは植えだり流したりさねさげ、子供の命は守ってくれよ」と言って許したけど。カッパは何回も頭さげながら、青龍寺川さザブンと飛びこんで見えなぐなったけど。それがらこの川での川流れはなぐなって、茶屋もその後ますますはやるようなったけど。トンピンカラリネッケド。