わいわい子育て

世界の子育て

サモア編 斎藤アロイシアさん(山形市)

2017年9月5日掲載

 海外出身者に故郷の育児や家族観を紹介してもらう「世界の子育て」。今回は南太平洋の島国サモア生まれの斎藤アロイシアさん(51)=山形市=に聞いた。=随時掲載します

斎藤アロイシアさん=山形市
斎藤アロイシアさん=山形市

 アロイシアさんはサモアの首都アピアで生まれ育った。青年海外協力隊でアピアに赴任していた夫(57)と19歳で結婚し、20歳で夫の故郷山形へ。既に独立した長男裕(ゆたか)さん(31)、次男飛龍(ひりゅう)さん(29)と大学生の三男謙光(けんみつ)さん(21)の3人の子どもがいる。アロイシアさんは現在自宅で英語教室を開いている。また、山形市が東京五輪でサモアのホストタウンとなるため、ホストタウン山形・サモア交流大使を務めている。

 サモアは大家族が一般的で、子どもたちは家の仕事をきちんとする。学校から帰ると家の仕事が待っている。12人きょうだいの6番目で長女だったアロイシアさんも、洗濯をしたり、小さい弟妹の面倒を見たりするのが放課後の日課だった。通学のバス代を節約し、弟妹におやつを買って帰ることもあった。

 お年寄りを尊敬し、優しくするという感覚も浸透している。時代とともにサモアも生活が便利になっているが、そういう部分は変わっていない。アロイシアさんは「昔の日本に似ているのでは」と思う。

 20歳ぐらいで結婚する人が多かった。サモアでは21歳で成人、という考え方。21歳になると、各家庭に友人を招き、結婚式のように盛大にお祝いをする。親が子に自由や自立を意味する鍵の飾りを贈るのが習わしだが、アロイシアさんは20歳で来日したためもらっていない。「もらいたかった」と笑う。

 サモアの人は性格が明るく、音楽が好き。子どもたちも教わらなくても自然に歌えるようになる。国民の大半がキリスト教を信仰している。アロイシアさんの実家の隣には教会があり、毎朝お祈りをしていた。

【乳幼児期】

10年ほど前に撮った3兄弟のスナップ。左から次男飛龍さん、三男謙光さん、長男裕さん
10年ほど前に撮った3兄弟のスナップ。左から次男飛龍さん、三男謙光さん、長男裕さん

 きょうだいが多いので子どもの自立も早いという。6カ月くらいで卒乳する子もいるとか。2、3歳で母親のお手伝いをできるようになる。自分で食事ができたり、洋服を着たりすることができるようになれば、幼稚園に通う。それまでは家で育てる。ただ、経済的な問題もあり、全ての家庭が幼稚園に通わせるわけではない。

【学校教育】

 初等教育が8年間、その後、5年間の中高等学校に進む。学校で先生の言うことを聞くのは当たり前で、子どもが学校で怒られたら「おまえが悪いことをしたから怒られたんでしょ」と言う。親と先生が一緒の立場で子どもをサポートしている。だから日本の親と先生の関係には違和感を感じることもある。わが子には、「得意なことを見付けて自信を持って過ごしなさい」と教えた。

 サモアでは「勉強しなさい」と言われることはあまりない。休みは休み。長期休暇も宿題がなく、日記のみ。授業は午後2時など早い時間に終わる。午前11時くらいにスコーンやパンケーキなどの軽食をとり、昼食は帰宅してから食べる。

 日本は受験勉強も大変でかわいそうに思う。日本で子育てをしていてサモアと違ったのは思春期があること。アロイシアさんは「サモアでは思春期はない。ストレスが少ないからかな」と分析する。

【子育ての考え方】

 コミュニケーションはしっかり取るが、「自分で強くなりなさい」という方針で、しつけは厳しい。怒るときは怒るが褒めるときはすごく褒める。社会は厳しい。自分の人生を自分の足で歩んでほしいから、子どもには「優しさを心に隠して」(アロイシアさん)あえて厳しく接する。そのためか、サモアでは社会に出てからもみんなしっかり自分で考えて動くことができるという。

サモアの朝食の定番―バナナスープ

 サモアでは朝食の定番。息子たちも大好きな味だ。ココナツクリームはサモア料理に欠かせないが、日本では新鮮なココナツクリームが手に入らないため、なかなか作れない。

バナナスープ

◇材料

材料 バナナ6本、タピオカ200グラム、ココナツクリーム1カップ。

◇作り方
  • (1)タピオカは水につけておく。
  • (2)バナナは皮をむいて半分に折り、ゆでる。バナナが浮かんできたらスプーンで細かくする。
  • (3)タピオカを加え、スープをかき混ぜながら弱火にかける。
  • (4)タピオカが透明になったら火を止めてココナツクリームを加える。
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