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4月から保険適用の「不妊治療」 米沢・「ゆめクリニック」院長の太田信彦さんに聞く

2022年4月5日掲載
不妊治療について説明する太田信彦さん=米沢市・ゆめクリニック
不妊治療について説明する太田信彦さん=米沢市・ゆめクリニック)

 不妊に悩んで検査を受ける夫婦は約6組に1組とされる「不妊治療大国」の日本。今月から体外受精などの不妊治療に公的医療保険が適用された。年齢制限はあるが、治療は原則3割負担、高額医療費制度の対象になり、経済的負担は軽くなった。不妊治療を行う産婦人科医は、悩む夫婦らに親身に寄り添い、時には夫婦生活に積極的に助言する。不妊治療の進み方、正しい妊娠の知識を、米沢市の「ゆめクリニック」院長の太田信彦さん(58)に聞いた。太田さんは「38歳を超えたら、妊娠はかなり厳しいというのが医師の感覚だ。妊娠や出産について、20代から考えてほしいし、職場など社会全体でサポートできる環境が望ましい」と話す。

■まず検査

 不妊治療を希望すると、まず検査から始まる。男性は精液を採り、精子の量や数、運動している割合を調べる。女性は排卵の有無、卵管の状態を調べる。精液中の精子が少ない、生理があっても排卵がない、卵管が詰まっていて卵子が通れないといった場合は、投薬や手術で治療する。

 検査の結果、7割は異常が見つからないという。まず取り組むのは、タイミング法。生理の3~6周期をめどに取り組むのが一般的で、これだけで3~5割は妊娠する。具体的には超音波検査で卵胞の大きさを見て、排卵日を予測し、妊娠しやすいタイミングで性行為を行う。太田さんは「排卵日の2日前が最も妊娠しやすい。生理が28日周期であれば、14日目くらいに排卵する」と説明した。排卵は基礎体温の変化でも分かる。注意してほしいのは排卵日を教えるアプリを信じ過ぎてしまうこと。生理の周期は人それぞれで、排卵のタイミングも異なるからだ。

■6回が目安

 タイミング法がうまくいかなければ、人工授精を検討する。精液を子宮に入れる方法で、1回目で10%、6回までに20~30%が妊娠する。6回以上は妊娠率が上がらないとされ、6回を目安に区切るケースがほとんど。期間は6カ月から1年ほどかかる。

 最終段階が、体外受精・顕微授精(ART=生殖補助医療)だ。女性側は、排卵誘発剤を使って一度に1~20個の卵子を取り出す。取り出した卵子に精子を振り掛けるのが体外受精、選んだ一つの精子を卵子に入れるのは顕微授精だ。その後、受精卵が4~5日かけて順調に細胞分裂した胚一つを子宮内に戻す。もし他に元気な胚があれば凍結することができ、99%よみがえる技術が確立されている。

 これまで、人工授精は1回2万円ほど、体外受精・顕微授精は1回50万円ほどかかり、凍結する胚が多ければ、さらに金額は膨らんでいた。今年4月から保険適用となったことから、原則3割負担で計算すると、患者が支払う額は人工授精は6千円ほど、体外受精・顕微授精は7~20万円ほどになる。

 高額医療費制度を利用でき、実質的な自己負担は軽くなる。県はこれまでの助成制度を改め、治療1回当たり9万円を助成する。

■43歳未満

ART妊娠率・生産率・流産率

 一方、体外受精・顕微授精に保険を適用するには条件があり、治療開始時に女性が43歳未満でなければならない。43歳以上は子どもを妊娠出産する確率が数%と極めて低いためだ。

 体外受精・顕微授精で生まれた子は14人に1人(2019年、日本産科婦人科学会)。結婚前の検査「ブライダルチェック」の内容はクリニックによってさまざまだが、「子どもを産み育てたい」と思う夫婦は産婦人科を訪れる良いきっかけになる。

 健康なカップルが妊娠する確率は、ぴったりタイミングが合っても3割程度。精子は子宮内で3日は持たないといい、1日や2日おきに性行為があれば、排卵日が多少ずれても妊娠する可能性が残る。太田さんは「排卵日に固執し過ぎず回数を増やし、スキンシップとして性生活を楽しんでほしい」とエールを送った。

 妊娠する確率は23~24歳をピークに、緩やかに下降していく。女性の年齢が上がれば、妊娠する確率は下がり、流産が増える。30歳を超えた妊婦は妊娠高血圧症候群など合併症になる人が多くなり、38歳以上は胚が育ちにくかったり、染色体異常による流産が増えたりする。「『気付いた時には遅かった』とならないよう、自分のライフプランを描いてほしい」とアドバイスした。

【ズーム】不妊

 日本産科婦人科学会は、避妊せずに、週1~4回程度の性行為を続け、1年たっても妊娠しない場合を基準としている。

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