わいわい子育て

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ゲームとの上手な付き合い方 東北文教大・永盛善博准教授に聞く

2022年1月18日掲載
東北文教大教育開発センター長の永盛善博さん=山形市・同大(撮影時マスクを外す)
東北文教大教育開発センター長の永盛善博さん=山形市・同大(撮影時マスクを外す)

 わが家には小学1年生と保育園年長の息子がいる。昨年のクリスマスにサンタクロースから人気ゲーム機をプレゼントされ、すっかり夢中だ。親としては幼い子どもがゲームに夢中になることで何か悪影響はないか心配でもある。ルール作りや守らせ方も難しい。同じように悩む保護者は少なくないのでは。発達心理学を専門とする東北文教大教育開発センター長で人間関係学科准教授の永盛善博さん(41)に、ゲームとの付き合い方について話を聞いた。

■ゲーム機使用の低年齢化は進んでいるのか。

 「学研教育総合研究所の2019年の調査によると、家庭内でゲーム機を含む通信機器に触れている幼児(4~6歳児)はおよそ2人に1人。通信機器の利用開始年齢の低年齢化は進んでいるようだ」

■ゲームは子どもの発達に悪影響を及ぼすか。

 「長時間ゲームで遊び続けると、理性をつかさどる前頭前野の働きが抑制され、日常生活に支障をきたす“ゲーム障害”につながることがある。コミュニケーションを取るのが難しくなったり、運動不足にもなったりする。だから、長時間のめり込むのはやめた方がいいが、バランスよくゲームと向き合えるならそれほど問題はないだろう」

ゲーム機で遊ぶ記者の息子たち
ゲーム機で遊ぶ記者の息子たち

■バランスよくとは?

 「ラットを使った実験がある。一つのグループは個別のケージに入れてモルヒネと水を与えると、モルヒネに依存した。もう一つは集団でケージに入れてモルヒネと水を与えたが、ほかのラットとの関わりが見られた。つまり、さまざまなものが楽しめる環境であることが大切。ほかのおもちゃ、外遊び、お絵描き、工作なども選べる環境で、ゲームはその中の一つとしてある分には構わないだろう。ただ、長くても1日1時間くらいが良い。また、オンラインゲームは遊び続けたくなるうまい仕組みになっていて区切りをつけるのが難しい。ゲームをさせるならスマホよりゲーム機の方がいいと思う」

■ルールの作り方、守らせ方はどうしたらいい?

 「子どもと一緒に考えよう。本人が納得できるルールでないと守ることは難しい。例えば親が30分までにしたいのであればその根拠を示してあげる。もっと長く遊びたいときは期間限定で時間を増やすといったルールを作る。約束したことは紙に書いて“見える化”しておくとお互いに思い出せるし確認しやすい。ルールを破った時はどうするかも話し合っておきたい。小学校低学年までは『親が絶対』でもいいかもしれないが、高学年になると頭が回り弁も立つので親に隠れてやるようになる。ゲーム依存が顕著になるのは高学年からなので、幼いうちからゲーム機やスマホの使い方について話し合い、一致点を見つけることが重要だ。でも、親がスマホを触る時間と子どもがスマホを触る時間には相関関係が見られる。親がいじっているのに子どもはだめでは説得力がなくなってしまうので気を付けたい」

■親としての心構えについてアドバイスを。

 「子どもに何かしてもらいたいときは『私(I)』を主語にした『アイメッセージ』を使おう。例えばゲームで汚い言葉を使うのをやめてほしかったら『お母さんはそういう言葉はぐさっとくるな』とか。あなたを主語にした『あなたは…しなさい』という指示は、評価的な話になってしまう。『あなたが大事だから○○してほしい』など、子ども大切に思う気持ちも伝え続けてほしい」

早速、記者も長男と挑戦―約束事、掲示してみると…

 永盛さんに話を聞いた後、早速、長男とルール作りに挑戦してみた。今まではなんとなく1日30分までと決めていたが、改めて「平日は宿題や学校の準備、休日は習い事や野球で忙しいよね」「1時間では長いし、15分では短いね」などと話し合った。紙に書いてキッチンのマグネットボードに張り、いつでも目に入るようにしてみた。ゲームのためだが進んで宿題や翌日の支度を終わらせ、「きょうは金曜日だからゲームしない日だ」などと言うようになった。いつまで続くだろう。もし、問題が起きたらその都度しっかり子どもと話し合ってみようと思う。

長男と話し合って決めたルールを紙に書いてキッチンに張ってみた
長男と話し合って決めたルールを紙に書いてキッチンに張ってみた
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