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児期の言葉の発達 言語聴覚士・石川さん(山形)に聞く

2021年7月6日掲載
幼児期の言葉の発達について説明する石川良子さん=山形市
幼児期の言葉の発達について説明する石川良子さん=山形市

 子どもが言葉を話すようになり、コミュニケーション手段が増える楽しさを感じているパパママも多いのでは。一方で「同じクラスの子はあんなにしゃべるのに…」「正しく発音できてないみたい」「赤ちゃん言葉がまだ抜けないのかな」といった悩みも出てくる。成長や発達は個人差が大きいと分かっていても、親の不安は尽きないものだ。

 県言語聴覚士会(荒井晋一会長)の副会長で、障害児の福祉施設で働く言語聴覚士石川良子さん(44)=山形市=に、幼児の言葉の発達について聞いた。

■幼児期の言葉はどのように発達するのか。

 「一般的には、1歳ごろに『パパ』『ママ』などの単語が出てきます。2歳くらいで『パパ、かいしゃ』『ママ、だっこ』などと2語文を話すようになり、3歳を過ぎると、文章のようなものを話すようになります」

■発達が遅いと判断する基準は。

 「個人差の域を超えると判断されるのは1歳半を過ぎても単語をしゃべらない場合で、難聴や自閉症などの発達障害が原因として考えられます。まったくしゃべらないわけではなく語彙(ごい)が少ない子なら、3歳くらいまで様子を見てもいいのでは。うまく言葉で伝えられないため1人で遊びがちだったり、友達とトラブルになってしまったりするので、そういった場面が出てきたら自治体などに相談してはどうでしょうか」

■カ行やサ行の発音が気になるときは、小学校に入るまでに正しく発音できた方がいいと聞くが…。

  「サ行は発音の中で最後に獲得する音とされています。成長の段階で、まだ言えない場合は、言える能力の中で一番近い音を言おうとします。間違って学習している場合もあります。誤った発音が定着してしまうと、正しい音が出せなくなることも。本人が正しく発音しているつもりなら、正しくない音の出し方が体に染み付いてしまったのかもしれません。個人差や月齢を加味しても、年中(5歳ごろ)になると細かな発音の違いが聞き分けられるとされています。自分で気が付いて、正しい発音に直せる子もいます。年中の終わりごろになっても正しく言えない場合は、練習をした方がいいでしょう。また『り』や『き』の発音が日本語的ではない子がいます。こうしたひずみがある場合は訓練が必要です」

■突然どもり始めたらどう対処したらいいか。

 「吃音(きつおん)を直すかどうかは本人の困り具合によります。3歳前後で突然始まるとされ、7割は1~2年で自然に治ると言われています。『おおおお、おはよう』と最初の音を何度も繰り返したり、『おーーはよう』と伸ばしたりする吃音は周りが気付きやすいです。本人が気にしてしゃべらなくなったり、友達と遊ばなくなったり、様子や行動が変わったらすぐに相談しましょう。気付きにくいのは『……おはよう』と音を出そうとしているのに出せない場合。なんとか出そうと体を揺すったり、顔が赤くなったりする子もいます。これは重い吃音です。吃音の専門医は県内にはいませんが、まずはかかりつけ医に相談してはどうでしょうか」

■言葉の練習はどうしたらいいのか。

 「自治体によって違いますが、教育委員会などが開く教室の多くは小学生向けで、教員が指導しています。中には未就学児を受け入れてくれる所もあります。小学校に入ってから教室に通う場合は、授業を抜けたり、保護者の送迎が必要だったりする場合があります。また、少ないですが、言語聴覚士が個人で開業している教室もあります」

■子どもの言葉に悩みがある場合、親はどう行動したらいいか。

 「様子が心配だったら、自治体の子どもの発達に関する窓口や保健師、かかりつけの小児科医に相談しましょう。様子を見ていい場合と、すぐに対応しなければならない場合があります。発音を直すには1年程度かかる場合が多いとされています。就学前に直そうと考えるなら、年長から練習を開始するのが良いでしょう」

【対応のこつ】

■正しく発音できない
    ★相づちを打つように、自然な感じで正しい発音を繰り返す
  • 例えば(魚を見つけて)
  • 子「ちゃかな!」
  • 親「そうだね、さかなだね。さかな、おいしそうだね」
■吃音がある
  • 言い直しは絶対にさせない
  • 言葉が出るまでだまって聞く
  • 緊張やストレスがあると吃音が出やすい。余計に意識させてしまうので「ゆっくりしゃべっていいよ」とは言わない
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