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5歳児未満が対象、子どもの熱中症対策 中井こども医院 中井伸一院長に聞く

2014年6月3日掲載

 5月下旬に早くも今年初の真夏日となるなど、暑い日が続いている。子どもが元気に外で遊んだり、スポーツを楽しんだりするには熱中症対策が欠かせない。5歳未満児を中心に、子どもならではの注意点を中井こども医院(山形市花楯1丁目)の中井伸一院長(59)に聞いた。

子どもの熱中症対策をアドバイスする中井伸一院長=山形市・中井こども医院
子どもの熱中症対策をアドバイスする中井伸一院長=山形市・中井こども医院
 -熱中症対策を考える上で、大人と子どもはどう違うのか。

 「子どもは体重に対する体表面積が大人より大きく、汗腺をはじめとした体温調節機能も十分に発達していないため温度変化の影響を受けやすい。大人よりも汗をかき、脱水症状に陥りやすいので一層の注意が必要だ。また、小さい子どもは自ら予防策を取ることができず、大人の気配りが重要になる」

 -子どもが一番注意すべき状況は。

 「最も危険なのは車の中。絶対に子どもだけを車内に置き去りにしないことだ。たとえエアコンを稼働させていたとしても、車がエンストを起こして停止したり、子どもがスイッチを触って冷房を止めるといったことも考えられる。あとは熱を持ったアスファルトなど地面の照り返しにも注意が必要。ベビーカーに乗せた赤ちゃん、背丈の低い子どもたちは影響を受けやすいが、大人は気付きにくい」

 -有効な予防策は。

 「適切に水分補給を行うことだ。少量の水分を小まめに摂取してほしい。子どもにとってはぬるいよりも少し冷たい方が飲みやすいだろう。ただ、冷たすぎると下痢をしやすく、さらに体内の水分を失って脱水症状に陥ることになる。激しい運動の後などはスポーツドリンクもいいが、多くの糖分を含んでおり、日ごろから水の代わりに摂取すると糖尿病、虫歯などを引き起こす心配がある。あくまで予防的に飲むことだ。外で遊ぶ際には涼しい時間帯を選ぶことも大事。真夏日の炎天下で激しい運動をするのは自殺行為に等しい」

-ドラッグストアなどでは脱水状態の時に適しているとされる「経口補水液」が市販されている。
熱中症予防コーナーが設けられ、経口補水液やスポーツドリンクが並ぶドラッグストア=山形市宮町5丁目、ドラッグヤマザワ宮町店
熱中症予防コーナーが設けられ、経口補水液やスポーツドリンクが並ぶドラッグストア=山形市宮町5丁目、ドラッグヤマザワ宮町店

 「経口補水液は脳の代謝を良くするブドウ糖やミネラルなどを含んでおり、うまく活用してほしい。赤ちゃんに離乳食を食べさせる際に補助的に使うこともできる。熱中症の予防のみならず、災害時の非常用備品として家に備蓄しておいても良いと思う」

 -自ら予防措置が取れない0~2歳児で注意すべき点は。

 「体温を測ったり、顔色を見たりして状況をよく観察することだ。大人は日ごろから熱中症の危険性を頭に入れ、予防策を講じておくことが大切。少しでも様子がおかしいと思ったらかかりつけの医者に診てもらってほしい。症状が進んでから対処しようとしても遅く、早め早めの対応が肝心だ」

-小学生の体育や部活動で注意すべき点は。

 「半袖、半ズボンなど風通しの良い格好で、帽子を着用してほしい。風が吹かず、熱気がこもりやすい体育館での運動はさらに注意が必要だ。教諭や指導者は十分に注意を配り、小まめな水分補給を心掛けてほしい」

 -就寝の際の注意点は。冷房をかけすぎると寝冷えし、暑すぎると熱中症になる。

 「就寝時は汗が蒸発する際の気化熱で体温が下がり、体力が奪われやすい。体温調節機能が未熟な子どもはなおさらだ。扇風機の風を体に直接当てず、壁に向けて室内の空気を循環させるなど工夫してほしい。エアコンの場合は除湿機能ならば冷えすぎないだろうと思われがちだが、冷房より除湿モードの方が室温が下がるケースもある。近年はエアコンの機能が向上し、条件次第ではつけっぱなしで寝ることは一概に体に悪いとは言えない。ただ、常に快適な状況で過ごしていると、体が暑さに順応しにくく、急に温度が上がった日に体調を崩しやすくなる。暑さに体を慣らすという観点からは、ある程度の暑さの中で過ごすことも必要だ」

メモ

 熱中症は高温多湿で体の水分や塩分のバランスが崩れ、体の調整機能がうまく働かなくなることで起きる症状。高齢者と子どもは特に注意が必要とされ、幼児は自律神経機能や臓器が未熟なため、暑さに対応できず発症しやすい。 県健康長寿推進課によると、熱中症の重症度は3段階に分けられ、軽度ではめまいや立ちくらみ、筋肉のけいれんなどの症状を発症。中度では頭痛や吐き気、嘔吐(おうと)、倦怠(けんたい)感などが出る。重度になると意識障害や運動障害などが表れ、死に至る危険もあるため、ためらわずに救急車を要請するよう呼び掛けている。 県内では今年、5月27日に初の真夏日を記録。その後も高温で推移し、熱中症による救急搬送が相次いでいる。

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