
山形の親子が初めてのかまくら作り 笑顔で疲れ吹き飛ぶ
山形の冬は長く、厳しい。しかし、だからこそ雪国ならではの喜びがここにはあるはずだ。父が子に自然の楽しみ方を伝える今回の「自然塾」は、雪遊びがテーマ。 あいにくの吹雪に見舞われながらも、力を合わせて初めてのかまくら作りに取り組んだ親子の一日を紹介する。

今回登場するパパは山形市沼木、会社員後藤健さん(34)。双子の長男希星(きら)君(8)=南沼原小2年=と次男蒼宙(そら)君(8)= 同、三男風海(ふう)君(4)=木の実西部保育園=と一緒に豊富な雪をたたえる上山市の蔵王坊平高原を訪問、トレーニング施設「ZAOたいらぐら」の許可を得て、駐車場で存分に雪遊びを堪能することにした。
この日は山形地方気象台が「暴風雪と高波および大雪に関する県気象情報」を発表。 断続的な降雪に見舞われる中、子どもたちは猛烈な雪にもめげずに駐車場へ一目散に駆けだした。「じゃあ、かまくら作りを始めるぞ!」。 後藤さんの合図で、雪かき用の金属製とプラスチック製のスコップ、スノーダンプを手にした親子が雪集めを始めた。
かまくらは(1)雪を積み重ねて山を作る(2)雪山の上に乗って圧雪し、強度を高める(3)空洞部分の雪を掘り出す―の手順。 しかし、いきなり誤算が生じた。標高1千メートルの雪はさらさらとしたパウダースノー。 雪は軟らかく、積み重ねたそばからすぐに崩れてしまう。「スノーボードには最高の雪質だが…。本当に作れるんだべが」。後藤さんから早くも弱音が漏れる。
約2時間、黙々と雪を集め、高さ1.5メートルほどの山ができた。 後藤さんは汗びっしょりだ。雪の上に寝転んだり、雪をぶつけ合ったりして遊んでいる3人の子どもたちを呼び集め、雪山の上に乗ってもらう。 ギュッ、ギュッ…。パウダースノーではあるが、力を加えることでそれなりの硬さになっている感触。「これはいける」。後藤さんのテンションが上がった。
空洞部分を掘り出すため、後藤さんが雪山にゆっくりと金属製のスコップを差し込む。雪は硬く締まり、崩れる気配はない。高さ80センチほどの入り口を作った後、内部から雪をかき出す。 「すごい、かまくらみたいになってきた」。さっきまで雪遊びに夢中だった子どもたちは、パパの姿にすっかりくぎ付けだ。

「できたぞ。中に入ってみろ」と促され、希星君と蒼宙君がかまくらの中へ。初めて作ったかまくらは小ぶりだが、2人が入るのにちょうどいい大きさ。 パパのスマートフォンで撮影された2人はどこか照れくさそうだ。後藤さんは早速、「フェイスブック」にその写真をアップし、子どもたちとの思い出の一日を記録に刻んだ。
トラック運転手として働く後藤さんは連日、山形市と福島県との間を長距離移動する毎日。深夜に帰宅することが多く、子どもたちと触れ合える時間は貴重だという。 後藤さんは「疲れたけれど、子どもたちの笑顔が見られて良かった」と笑顔。「いっぱい汗をかいたから、帰ってからのビールが楽しみ」と話し、満足げに帰路に就いた。

