わいわい子育て

アラカルト

絵本で感じる多様性やジェンダー平等

2021年3月2日掲載
有川富二子さん(左)、村山恵美子さん(右)
有川富二子さん(左)、村山恵美子さん(右)

 日常ではない世界をも疑似体験できる絵本には人生の示唆が見える。さまざまなタイプの登場人物が現れ、内容はドキドキワクワクの展開だったり、同じリズムで繰り返される安心感があったり、千差万別だ。いま話題の多様性やジェンダー平等といった価値観を育む機会にもなる。

 おなじみの絵本などをジェンダー視点で深掘りしている、人形劇サークルとんとん代表の村山恵美子さん(64)=山形市=と、絵本とジェンダーに関する講座を先日開催したチェリア塾ネットワーク村山副代表の有川富二子さん(63)=同=に話を聞いた。

 2人は「物語の良い悪いを判別したいわけじゃない」と前置きして絵本を紹介した。村山さんは「ストーリーの面白さだけでなく、物語に隠れたジェンダーの不合理や理不尽があることに気付いてほしい」と強調。「絵本はいろんな生き方を知る手段であり、家族の形も協力の仕方もいろいろある。自分らしくあることを認められるように、自分も相手も大切に考えられるようになってほしい」と話した。

 ロシア民話の「マーシャと白い鳥」(1)は白い鳥に連れ去られた弟を探しに行く姉の話。描かれる女の子は自分で決断し、実行力があり、最後まで諦めない姿を見せる。一方、「白雪姫」(2)は、見た目の美しさと家事能力が女性の価値であるように受け取れると指摘する。有川さんは「白雪姫は他人を疑わない鈍感さがあり、自分で自分を守れない。女性には危機管理能力がないという描かれ方だ」と語る。

 「ももたろう」(3)には古い価値観の男性像が描かれていると解説。おばあさんが「甘い桃、こっちゃ来い」と優劣を選別する場面に始まり、主人公の男の子は強く正義感のある存在だ。仲間のイヌ・サル・キジと上下関係をつくり、鬼を倒す。村山さんは「『他者より優れた存在にならなければならない』『勝たなければならない』という刷り込みが男性を息苦しくしているのでは」と推測し、ご褒美がお姫様という描き方にも疑問を呈する。

 自分らしい活躍を描いたストーリーもある。高層階のビルを消火するはしご消防車に憧れるが自分にしかできない山火事の消火を経験して自信を得る「しょうぼうじどうしゃじぷた」(4)と、仕事に真面目で公平な判断をしながら黙々と働く除雪車が主人公の「はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」(5)を挙げた。

 マイノリティーについて考えるきっかけになる本も。きょうだいと違うことで親からあれこれ心配される「わたしはあかねこ」(6)の主人公は、自分は赤が好きと自信たっぷりだ。居心地の悪い家を抜け出し、ラストは水色の猫と出会って幸せになる話だ。「まっくろネリノ」(7)は鳥の家族が題材。真っ黒なネリノはカラフルなきょうだいからいじめられる。それでも、きょうだいがさらわれたときには、黒さを生かして闇に紛れて大活躍する。米国の家族を描く「ふたりママの家で」(8)は、人種の異なる3人の養子を迎えたレズビアンのカップルの日常を、長子の女の子の目線で紹介する。

 村山さんと有川さんは「いろんな作品に触れると、生き方の幅が広がるのでは。お話の後でどう思うかを親子で話してみたらどうでしょう」と提案する。「『結婚後、頼っていた男の人が病気になったらどうする?』『賢さや勇気が必要なのは女の子もだよね』こうした会話で多様性を受け入れ、自分も相手も肯定できる感覚が養われるのではないでしょうか」

【作品紹介】

  • (1)「マーシャと白い鳥」再話 M・ブラートフ 文・絵 出久根育(偕成社)
  • 「マーシャと白い鳥」
  • (2)「白雪姫」文 岩瀬成子 絵 荒井良二(フェリシモ出版)
  • 「白雪姫」
  • (3)「ももたろう」文 松居直 画 赤羽末吉(福音館書店)
  • 「ももたろう」
  • (4)「しょうぼうじどうしゃじぷた」作 渡辺茂男 絵 山本忠敬(福音館書店)
  • 「しょうぼうじどうしゃじぷた
  • (5)「はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」文・絵 バージニア・リー・バートン 訳 いしいももこ(福音館書店)
  • 「はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」
  • (6)「わたしはあかねこ」作 サトシン 絵 西村敏雄(文渓堂)
  • 「わたしはあかねこ」
  • (7)「まっくろネリノ」作 ヘルガ・ガルラー 訳 やがわすみこ(偕成社)
  • 「まっくろネリノ」
  • (8)「ふたりママの家で」絵・文 パトリシア・ポラッコ 訳 中川亜紀子(サウザンブックス社)
  • 「ふたりママの家で」
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