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今春設立「福祉会」の取り組み 一人親家庭、孤立させない

2016年9月6日掲載

 県母子寡婦福祉連合会など県内の有志が今春、設立したNPO法人「県ひとり親家庭福祉会」(西塚憲子理事長)。一人親家庭の子どもへの学習支援や、子どもの孤食を防ぐために開設された「子ども食堂」の運営などに携わるほか、訪問型病後児保育などにも力を入れている。山形市の県総合社会福祉センター内に事務所を置く同福祉会の取り組みを紹介する。

 同福祉会は2016年4月に設立され、母子団体からの寄付金などで事業を展開している。県ひとり親家庭実態調査結果報告書によると、14年8月現在で、県内のひとり親家庭は1万2658世帯(母子1万818世帯、父子1840世帯)。一人親家庭は県全世帯のおよそ3%を占めるという。

 一人親世帯は生活のために夜間も働きづめとなるような場合、子どもの行動に十分に目が行き届かなくなる心配もある。行政の福祉担当課や母子福祉団体などの活動につながらず、支援情報に接する機会が少なく、一人で悩み孤立してしまう状況も懸念される。こうした問題点を改善し、具体的な支援策や情報発信を行う団体の活動が求められるとして設立された。

 具体的な取り組みは、大きく分けて二つ。現在困っていることへの支援、将来への不安についての対応となる。まず、現状への支援活動では▽訪問型病後児保育▽県の委託を受け、無料学習塾の実施や子ども食堂を通じた子どもの教育▽生活での困り事相談-が挙げられる。

 訪問型病後児保育は生後1年から小学6年生までを対象としている。強い感染性を持たない病気に限り、緊急時には親が対応できることなどを条件に行っている。介護職員初任者研修を受けた支援員18人が依頼があった居宅を訪れ、一人親の代わりに病後児保育のサービスを提供する内容。利用料は一律1時間300円で、支援時間は午前9時~午後6時で応じている。仕事を急に休めないなど、困難な状況にある一人親をサポートしている。

 「無料学習塾」は公共施設を使った教室方式で実施している。山形(県総合社会福祉センター)、酒田(酒田市地域福祉センター)、米沢(米沢市すこやかセンター)の3教室で毎週末に実施。県内在住の一人親家庭の子どもが支援対象で、山形大などの学生ボランティアスタッフがきめ細かく指導に当たっている。貧困による学力格差を解消するのが狙いだ。

 孤食状況にある子どもに対して無償で食事を提供する「子ども食堂」は、8月に山形市内でモデル的な事業としてスタートした。月に1回のペースで取り組み、9月には米沢市内でも食堂を開く方針。子どもの孤食を防ぎ、地域の一人暮らしの高齢者らと楽しく食事をすることで、健やかな成長を促す取り組みとなる。困り事相談では支援サービスの周知が主になる。6月に新設し、就労や生活、育児など幅広い相談に対応する「県ひとり親家庭応援センター」での活動などを紹介している。

 一方、将来について抱えている不安への対応は▽母子家庭限定の婚活事業▽将来設計などについて気軽に相談できるカフェ事業-の2点を重点的に取り組む。

 婚活支援事業は、母子家庭の母親を対象にして出会いの場を提供。将来を見据え、人生の選択肢の幅を広げてもらう狙いがある。カフェ事業は、シングルマザーらが一人親世帯で同じ悩みを持った仲間や相談員らと気軽にお茶を飲みながら、交流を図る内容。人生設計のヒントを見つけてもらう。10月23日午後2時から山形市の県総合社会福祉センターで、参加費無料で開催する予定だ。

 同福祉会はこうした幅広い活動を通じ、一人親家庭への支援の輪を広げていきたい考え。伊藤孝事務局長は「生活が大変な人ほど、それを訴える声がなく、姿も見えないという現実がある」とし、「実りのある活動を継続していくため、団体・個人から寄付金を募っていきたい」と支援や活動への協力を呼び掛けている。

 問い合わせは県ひとり親家庭福祉会023(622)5570。

【具体的な主な活動】


▽一人親家庭が現在困っていることへの支援
 (1)訪問型病後児保育
 (2)無料学習塾の実施・子ども食堂による社会性の育み
 (3)「県ひとり親家庭応援センター」の支援活動の周知などを通じた生活での困り事相談

▽一人親家庭の将来への不安についての対応
 (1)母子家庭限定の婚活事業
 (2)将来設計などについて相談できるカフェ事業
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