わいわい子育て

アラカルト

山形「おひさまルーム」 「病児保育」心強い味方

2016年3月22日掲載
看護師と保育士が常駐し、病児保育に対応する山形済生病院病児保育所「おひさまルーム」=山形市
看護師と保育士が常駐し、病児保育に対応する山形済生病院病児保育所「おひさまルーム」=山形市

 保育所に通う子どもが急に発熱したら、どうすればいいのだろう。同居や近居の祖父母に頼む? それでもだめなら、仕事を休まざるを得ない。でも、仕事は急には休みにくい-。共働きや一人親の保護者にとっては切実な悩みだ。そんな時に大きな味方となるのが「病児保育」。しかし、施設が整備されていない市町村もあり、十分には有効活用されていないのが実情のようだ。今回の「わいわい子育て」は県内の病児保育の現場を訪ねてみた。

 病児保育施設は、保育園などに登園できない病気や病み上がりの子どもを預かる施設。病状によって「病児対応型」「病後児対応型」「体調不良児対応型」の三つに分類される。今回訪ねた山形済生病院病児保育所「おひさまルーム」(山形市沖町)は、市の委託を受けて運営する「病児対応型」施設。看護師宿舎の一室を改装した部屋で、1歳以上の子どもを預かっている。

 2LDKの部屋には看護師と保育士各1人が常駐。子どもたちを楽しませるプラレールや人形などのおもちゃ、絵本も置いている。保育士の渡辺祥子さん(47)は「熱があっても元気に遊びたいという子どもも多い。布団を敷いた上で、無理のない範囲で遊ばせて対応している」。看護師の境清美さん(38)は「初めての子どもは普段の様子が分からない。子どもの反応を探りながら、注意して容態をみている」と説明する。希望する利用者には、子どもの状況を随時メールで知らせるサービスも行っている。

 月―金曜は午前8時半~午後5時半、土曜は午前8時半~午後0時半に開所。予約は当日でも可能で、同病院によると、季節の変わり目など子どもが体調を崩しやすい時季に利用が集中する傾向にある。一方、別に預け先が見つかったり、仕事の調整が付いたりしたという理由から、当日になってキャンセルが出る日もあるという。

 利用には事前登録が必要で、登録者数は2011年度の開所以来、累計840人。預かりの定員は1日3人で、15年度の平均利用率は66%という。同病院の鈴木健憲総務課長は「最も多い要望は、朝夕の利用時間を拡大してほしいという声。職員体制や運営費の問題もありニーズに対応しきれていない部分も少なからずある」と説明。7割弱という利用率については「サービスを知らない人も相当数いるのでは」と分析する。サービスの認知度を高め、潜在するニーズに応えていく必要があると言えそうだ。

早期の体制整備が必要

 県のまとめでは、県内の「病児対応型」施設は8施設で、「病後児対応型」「体調不良時対応型」を含めると計51施設ある。県は「やまがた子育て応援プラン」(15~19年度)で、これらを計57施設に増やす数値目標を掲げている。

 病児対応型施設がない市町村では、特に共働きや一人親で子どもが発熱した場合、別の預け先を探したり、仕事を休んだりして対応しなければならない状況が発生する。長井市で昨春、ひとり親家庭のコミュニティー「あんじゅ会」を発足させた同市地域おこし協力隊の佐藤亜紀さん(28)は、スピード感を持って病児保育の体制を整備する必要性を訴える。

 佐藤さんは「求職中だが、子どもが熱を出した時の預け先がなく、なかなか採用されない」「子どもが熱を出した時に有給休暇を取れるように、自分が病気になっても休まず、はってでも出勤する」「いくら仕事で成果を挙げても、子どもが熱を出したからといって急に休めば『これだから女性は信用できない』と思わせる材料を与えてしまう」といったメンバーの声を紹介。「県は病児保育施設を57カ所に増やす計画だが、ぜひとも親が利用しやすい仕組みにしてほしい」とした上で「都内で注目されている訪問型サービスが地方でも実現すれば」と話している。

県内の病児・病後児保育施設
メモ山形済生病院病児保育所「おひさまルーム」

 山形市内在住で、病気の発症直後から回復期にある1歳~小学3年までの子どもを預かる。利用料は月―金曜が1日2000円、土曜が1000円で、昼食代は300円。利用には事前登録のほか、かかりつけ医を受診し、利用連絡票を記入することが必要。

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