21世紀山形県民会議「インバウンド拡大への道」|山形新聞

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テーマインバウンド拡大への道

「本物の日本」と言える資源のアピール

 -ここまでの論点を踏まえ、「『本物の日本』と言える資源をいかにアピールしていくか」について、発言をお願いしたい。

吉村 外国人にも響く本県の価値として、豊かな自然が挙げられる。精神文化も誇るべき本物と言える価値と捉えている。県としてこの精神文化に光を当て、旅行商品の開発や情報発信などに力を入れてきた。出羽三山の山伏修行体験や黒川能体験が政府観光局の「世界に向けて選定した50のコンテンツ」に入るなど高い評価を受けた。体験や宿と並び、旅の重要な目的の一つと言われているのが食。ラーメンやそば、フルーツなど食文化は国内外に響く本県の価値だ。今後も農産物や県産品の輸出拡大とともに、観光についても官民一体となって本県の価値や魅力を売り込む。

佐藤孝 本物の山形を体験してもらうことで、本物の価値への理解と、それに見合った対価を払っていただくことが重要だ。山形市に残る伝統工芸や和菓子、料亭、やまがた舞子、お茶、着物などの文化は、どれも創業100年以上の老舗が関わり、まさに日本文化の王道を行くコンテンツと言える。こうした価値を伝える体験型ツアーの確立が求められる。1カ所に長く滞在し、周辺地域に足を伸ばすという外国人に多い旅行スタイルに合わせ、JR山形駅周辺に観光案内拠点をつくろうと取り組んでいる。米企業の調査で、山形市のキラーコンテンツは人の温かさと報告された。こうした人と、本物のコンテンツこそが山形のブランドだと言える。

矢野 一番の問題は山形に住むわれわれが地元の魅力をどれだけ知っているかということ。あるのが当たり前に思い、ありがたく感じていないことが多い。岩手には世界遺産が三つあり、それを目当てに観光客が来るという。県内に(有形の)世界遺産はない。以前断念したが、出羽三山の登録に再挑戦してほしい。世界遺産や国宝が山形にあることが県民の誇りになり、観光客を呼ぶ手段になる。開祖蜂子皇子(はちこのおうじ)の像の初公開や50年に1度の立石寺(山寺)の秘仏開帳などは大変な人出があった。本県の特徴として民間の美術館・記念館が多い。歴史というものは、新たにつくることができない財産だ。民間の財産を活用するため、公的支援が求められる。

鷲見 徳島県には「秘境感」で、外国人を呼び寄せている実例がある。目立った観光資源が見当たらないと卑下するのではなく、自信を持ち、コンテンツとしてアピールすることが大事だと、現地の観光団体に教わった。本県は庄内、最上、村山、置賜の4地域で語られることが多いが、観光客には関係ない。県内を観光し、県外に宿泊するケースもあり、気に入らなければ通過するだけだ。地域をまたぐモデルコースを、外国人がホームページなどから探せる仕組みが欠かせない。物語性が高い体験内容として、生活に根付き、継承されてきた事柄を通した住民と訪日客の交流に注目している。特に子どもの参加は地域の持続性に関する強いメッセージになる。

 「本物の日本」の「本物」はシンプルなものだと考える。分かりにくいものは、海外の人には受け入れられない。資源をアピールする方法は、ありのまま見せる、ラッピングして見せるというものがある。海外の人に分かりやすく伝えるため、外国人スタッフの雇用も大切だと思う。あれもこれもアピールするのではなく、スイデンテラスは食と精神文化を掛け合わせたコンテンツの充実に力を入れ、安売りしないことを心がけている。それだけの文化がこの地にあるからだ。ただ、訪日客が新潟や秋田を巡るルートで山形に立ち寄らないケースがある。今は単価を落とさず、いかに山形を知ってもらうかに挑戦している。

佐藤亜 住民が地域資源の価値を認識することがスタートではないか。新庄商工会議所では地域の観光ブランディングに向けて定期的にワークショップを開き、地域資源の歴史的な背景を深掘りし、ストーリー化する作業に取り組んでいる。住民が地域の良さを理解すると地元への誇りが生まれ、外国人観光客の共感につながる。それが住民の自信となり、地域の価値が高まる。私たちは地域の未来をつくるために地域振興に取り組むべきだ。一人の百歩より百人の一歩だと思う。以前、県内の在来線のワンマン列車で、降り方が分からず困っている外国人に高校生が一生懸命、ジェスチャーを交えて案内していた。こうした意識や行動を県全体に広げていこう。

-国会議員の考えは。

遠藤 「面倒くささ」をいかにつくっていくかが大切だ。数年前、フランス・シャンパーニュの有名シャンパンメーカーに行った際、酒ごとに「これを飲んだらこの料理を食べてください」と、2時間ぐらいずっと酒と料理を一体で味わう機会がった。日本の観光は、簡単に見せるだけで終わってしまっていることが多い。例えば、出羽三山でもガイドの説明だけでは30分で終わってしまうが、3~5時間をかけて体験を含めてじっくりと見てもらったり、山伏が全部説明してくれたりすれば、歴史まで全部が分かる。さらに、インターネットで情報を得ている外国人向けに、多言語でのネット発信に集中して投資すべきだ。

鈴木 地域に根差した稲作文化を通して本県の良さを伝えたい。国内では現在、「つや姫」が最も高い評価を受けている。「一番おいしいコメが育ち、食べられる山形」ということをPRできる。(訪日客と)触れ合うことで、生産者の真面目さといった稲作文化の精神性が伝わるのではないか。「山形」という県全体のブランドが普及しないのは、「米沢牛」「山形牛」といった複数の牛肉ブランドに代表されるような、分かりにくさがあると感じている。本県よりも広大なフランス・シャンパーニュが地域の垣根を越え、「シャンパン」の名で世界中に知られているように、長期的な視点で「山形」という世界ブランドをつくり上げればいい。

加藤鮎 「本物の日本」は探究しがいのあるキーワードだ。外国人に対し、本県の豊かな自然や精神文化を伝える上で、都会の日本人にアピールするのも一つのポイントになる。日本人も選ぶ「本物の日本」ということを知ってもらえれば、外国人も分かりやすく魅力を感じてくれるはずだ。農耕、稲作文化を基にした日本人の精神文化は自然への畏敬や万物への感謝につながる。海外の人が触れることは価値のある体験になる。ただ、コンテンツとして売り出すには企画力や技術がいる。県外出身者が出羽三山に魅力を感じ、地元の人と交流しながら訪日客向けのガイドをする例がある。本物の日本の価値を伝えるため、人材育成にも投資する必要がある。

舟山 住民が地元にある観光資源を再評価し、好きになり、応援する思いを持つことが人を呼び込む根本となる。例えば、新庄まつりは子どもを含めて地域一丸となって開かれており、関わっている人が楽しそうだ。私の地元の小国町も含め住民が魅力を認識し、磨くことが有効なアピールとなる。逆に、外向けだけを意識したPR方法は一過性に終わるのではないか。東京で食を売り込むだけではなく、「山形に来ないと食べられない」などと付加価値を生む発信も大切。観光スタイルが個人、滞在型へと変わる中、宿泊施設は、滞在客への情報提供など一層重要な機能を担うだろう。関係者が情報共有などで一体となって取り組めればいい。

芳賀 本物の山形を感じてもらうには、古里の歴史の「ストーリー」を伝えていく取り組みが必要だ。武将関連では、直江兼続と最上義光が激しく戦い、「北の関ケ原」と呼ばれる長谷堂合戦をはじめ、ケネディ元米大統領が絶賛したとされる上杉鷹山、戊辰(ぼしん)戦争での庄内藩の戦いぶりなど、海外にアピールできる題材が多くある。中でも、紅花の壮大なストーリーに注目したい。古代エジプトのナイル川流域が原産地とされる紅花は、シルクロードを通じ、長い時間をかけて最上川のほとりに根付き、今も文化が残っている。世界に誇るキラーコンテンツとなる。

 -議論を踏まえ、感想や提言をいただきたい。

ウォルター 観光はもともと、宗教的なスポットを訪れてパワーを持ち帰る「巡礼」だった。関係を持たずに、ただ見るだけで帰ってしまう観光ではなく、巡礼のように長期滞在・体験型で、実際に山形に住んでみたくなる企画が求められる。別荘のような感覚で海外から毎年、山形を訪れる文化をつくることができれば、移住者の増加や地域の消費拡大にもつながる。円安などの影響で日本に長く滞在する欧米人が増えている。“プチぜいたく”の場に山形を選んでもらい、ファンを増やすチャンスだ。ツアーは歴史的名所を回るだけではなく、丸1日ホテルで過ごしたり、自由に街歩きをしたりするなどの「休憩」を盛り込み、疲れさせない工夫が大切となる。長い期間でも楽しめる観光商品の造成が、外国人に「住んで楽しい山形」のイメージを伝えていく鍵となる。

加藤一 人口減の時代にあって定住人口を増やすことは難しく、どこの地方自治体も交流人口増に力を入れている。だが、果たしてそれでいいのだろうか。あと10年もすれば、交流する地方の人口自体が大幅に減る可能性がある。交流人口は一過性のもので、地域の力の底上げにはなりにくい。定住と交流の間に位置する関係人口を増やすべきではないか。その上で大切なのは、地域活性化に必要とされる「若者、ばか者、よそ者」の中でも「よそ者」を活用し、緩く関心を持つ人をどう開拓するかだ。関心を持ってもらうには、ターゲットを明確にした発信と、受け皿となるプラットフォームをつくることが求められる。地域の魅力を安易に安売りせず、高く価値を保つことは、それ自体が対外的なアピールにつながる。引き続き、スピード感を重視して取り組んでもらいたい。

閉会のあいさつ

山形放送社長 板垣正義

山形放送社長 板垣正義

 空港滑走路の延長、2次交通や宿泊施設の整備などのハード面と、観光コンテンツの掘り起こしや情報発信といったソフト面とで、多分野にわたり貴重な意見をいただいた。インバウンド推進の仕組みづくりの重要性を訴える意見、戦略に実効性を持たせるために期限を設けて事業に取り組むべきだとの指摘があった。今回の議論を踏まえ、本県のインバウンド拡大に引き続き、尽力をお願いする。


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