21世紀山形県民会議「インバウンド拡大への道」|山形新聞

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テーマインバウンド拡大への道

実効性のある観光戦略

 -「実効性のある観光戦略」について、まずは吉村美栄子知事に口火を切っていただきたい。

吉村 県は台湾、中国、香港、韓国、ASEAN(東南アジア諸国連合)等を重点地域に設定し、それぞれの市場特性を踏まえ、戦略的に誘客施策を展開している。5月に台湾を訪れ、プロモーションをした結果、台湾と本県を結ぶ秋季の国際チャーター便の運航実現と冬季の運航決定につながった。仙台空港からのアクセスも重要で、バス会社の協力により16日から仙台空港と山形、庄内とを結ぶ高速バスが再開した。チャーター便誘致の際、「滑走路が2500メートルないので難しい」とよく言われる。滑走路延長は大きな課題だ。ソフト・ハード両面の課題を打開することで、インバウンド拡大や国際チャーター便、国際定期便の実現などの道が開ける。

佐藤孝 地域資源を生かしたブランドを確立して高付加価値化を進め、富裕層を中心とした個人旅行客の拡大を目指す必要がある。山形市の蔵王温泉を例に挙げると、リフトの改修、DX化などの大規模投資や、ホームページの全面リニューアルのほか、台湾やオーストラリア、タイをターゲットにしたPRも行っている。そこで重要なのは人材育成だ。DMC蔵王温泉ツーリズムコミッティが発足し、地域が主体となって誘客する機運が高まっている。観光客に満足してもらうもてなしを提供するため、観光地と行政が前面に立った取り組みが求められる。観光地として稼ぐ地域になるべく、市民、企業、行政が認識を共有して団結することが大切だ。

矢野 東北6県がまとまれば、人気の高い北海道にも負けない魅力がたくさんある。観光誘客で6県が協力することが必要だ。6県の商工会議所連合会でも、仙台空港を核にした周遊企画などを考えている。そのためにはアクセスの向上が重要で、県内や東北各地の道路交通網と標識の多言語化などが課題になる。多言語対応の観光案内所の整備など、受け入れ態勢についても解決すべき課題が多い。山形からのアウトバウンドも重要だ。外国から来てもらうだけではなく、相互交流のために県独自のチャーター便運航などを考える必要がある。2500メートルの滑走路も、早期の実現をお願いしたい。私たち商工業者としても受け入れ態勢の強化を進める。

鷲見 「地方創生へ インバウンド拡大」をテーマとした2018年の21世紀山形県民会議を振り返ると、出された課題は全て今日にも当てはまる。画期的な成果は出ておらず、やり方から変えないと5年後も同じような議論をしているかもしれない。本県の観光入り込み客数は47都道府県中、40位前後。蔵王、銀山温泉、出羽三山、米沢牛、加茂水族館と、それぞれは知っていても「やまがた」を知らない人は多い。地元の若手民間人を主体とした仮称「どうする?山形プロジェクトチーム」の立ち上げを提案する。少人数で頻繁に議論を重ねて戦略を立て、行政がサポートする。民間手法を取り入れ、行政と民間が両輪となった誘客に改めることが必要だ。

 行政、地域、事業所それぞれのすべきことを整理した上で物事を捉え、それぞれの組み合わせを考えて実効性のある戦略を練ることが必要になる。山形県内のエリアごとの特性が知られていないため、ブランディングの強化が一番の課題になる。観光客を呼ぶには、コンテンツの掘り起こしや計画的な発信が重要になる。発信方法もさまざまあり、SNS(交流サイト)以外に世界各国の観光会議で、事業所と行政が連携してアピールすることもできる。アクセス関連の一例として熱海(静岡県)が導入したトゥクトゥク(小型三輪タクシー)の活用がある。来てもらった後にエリア内でどうアクセスをスムーズにするかも日々考えている。

佐藤亜 実効性のある観光戦略として、まず地域が一体となって取り組むという意識が必要だ。強みの異なる組織が一つになればスケールメリットも生まれる。二つ目は外国人のニーズに対応すること。日本人観光客が少ない早朝の体験プログラム提供に加え、対応するガイドの育成が重要だろう。新型コロナウイルス禍を経て、旅先の暮らしや環境に対する配慮など旅に関する価値観と意識が変わっている。こうした状況は自然が豊かで訴求力の高い山形にとって好機だ。「SDGs(持続可能な開発目標)」などをキーワードに、(自然や文化体験などを盛り込んだ)アドベンチャーツーリズムなど、トレンドに沿った提案ができればいい。

 -これまでの発言を踏まえ、助言をお願いしたい。

ウォルター 「ニーズ」と「ウォンツ」の違いを認識してほしい。キャッシュレス決済は必要だが海外では当たり前の環境で、「楽だな」と感じることはあっても魅力にはならない。外国人が日本の魅力と感じるポイントを理解した上で、コンテンツを提供する姿勢が大切だ。海外旅行は、自国にないものを求めて訪れる。蔵王の樹氷であっても、雪が身近にある地域の観光客には、大きな魅力と感じてもらうのは難しい。来てほしい国の人を理解するために、県内に住む外国人にDMO(観光地域づくり法人)などに参加してもらい、助言を求めることを検討してみてほしい。海外からの移住者が住みやすい環境の構築は、観光誘客と密接に関わる。アドベンチャーツーリズムが盛んな米コロラド州のように、移住者の増加で新しい文化が生まれ、外国人を引きつける魅力づくりにつながる。

加藤一 インバウンド誘致には、二つのファクターがある。一つは立地の優位性。もう一つはインセンティブ、つまりお金だ。立地が良いところは受け入れる自治体側にお金がなくても人が来てくれるが、立地が悪いところは、受け入れ側がお金を出して来てもらうしかない。山形はどちらかといえば後者だ。このお金の地域間競争が激しさを増し、金額が高騰している。金の切れ目が縁の切れ目となる。経済団体など中立的な立場の団体を交ぜて外国の航空会社と交渉する必要がある。新型コロナウイルス禍後に観光客数の回復が早かったところは、コロナ禍のころから誘客に取り組んでいた。空港で働く職員の給料を上げ、業界全体の魅力向上を図ることが求められている。インバウンド誘致は、空港の人材を含めたパッケージで考える必要がある。政策はその観点でやっていくべきだ。

 -国会議員の意見を伺いたい。

遠藤 2013年から日本のインバウンドが増えた理由の一つは五輪だ。東京を徹底的に世界に売り込んだことで、多くの人が関心を持ってくれた。イメージづくりが一番大きいと考える。山形も「山形ブランド」を徹底してつくり上げ、県全体が一つの目標に向かい、連携していくことが必要だ。そのためにはやはり人材が大事。まずは県民が「山形のものが素晴らしい」と思えるようにすることが求められる。数年前にミャンマーに行って驚いたが、「おしん」の評判が悪い。「日本はきれいだが古い国」と言われる。新しいドラマを徹底的に海外に売り込んでいる韓国は「現代的で行ってみたい」という。イメージ戦略にはそうした発想も重要になる。

鈴木 かつて、ライシャワー元駐日米大使は、本県を「山の向こうのもう一つの日本」と評したが、本県はその感覚に沿って街並みを整えてきただろうか。残念ながらそうは思えない。住民に不便を強いてでも、(美しい景観づくりのため)腹をくくれるかが本県の観光振興の分岐点であり、覚悟が問われている。まず必要なのは、泊まりたくなる宿泊施設だろう。例えば、銀山温泉では受け入れ数を増やす投資が必要な状況にある。広く平等に、ではなく勝ち目のある部分から積極的に投資していくことが周遊につながり、県全体の観光振興になる。きれいなトイレによるおもてなし、「銀山なら景観」「蔵王なら樹氷」といった分かりやすいPRも大切だ。

加藤鮎 今年10月の月間の訪日外国人数はコロナ禍前の2019年10月を上回り、今後も増加が期待できる。宿泊費や飲食費など1人当たりの旅行支出も増えている。ただ、増加は首都圏や京都などに限られており、地方はあまり伸びていない。1人当たりの宿泊日数を増やすことが大切になる。例えば台湾からの訪日客は、2度目に日本を訪れる際、四季の体感のほか、日本人の暮らしを体験したいというニーズを持つ。当たり前の日常を観光コンテンツとして提供するには、ハードルはあるものの、取り組む価値があると思う。専門的なチームを組み、データと情報を共有して戦略を練ることが重要。訪日外国人が伸びている今、本腰を入れるタイミングだ。

舟山 近代化が進んだ西欧より、古いものが残っている東欧の方が面白いと思う部分がある。本県にも十分に磨かれないまま存在している観光資源が多く、東京や西日本とも違う魅力としてどう打ち出すかだ。地域同士をつなぐコアをどうつくるかが大きなポイント。例えば知名度のある蔵王を拠点に、他の観光地を結びつけるなどプラットフォーム構築に本腰を入れ、環境や伝統文化への配慮も関連付けて発信したい。京都などの観光地を訪れた外国人を本県に呼び込む観点では、「足」の整備も重要となる。JRや私鉄、バスなどの乗り放題パスを提供するなど、公共交通機関同士を結びつけることが必要で、行政と民間、地域の連携が求められる。

芳賀 外国人向けの多種多様なメニューを徹底的にそろえたい。誰もが本県を訪れたいと思える環境を整えると共に、受け入れ側の意識転換も必要になる。道路標識や観光パンフレット、飲食店のメニューなども、訪日客が多い中国や台湾、韓国、米国の各言語に対応させるべきだ。アニメや侍、着物といった日本特有の文化に触れられる施設の整備や、伝統芸能の充実を図る取り組みも提案したい。一方でサービスに対する対価をしっかりと受け取り、ビジネスとして成立させる工夫も怠ってはならない。ツアー料金、入館料の値上げによる収入を、観光ガイド育成や文化財の維持・管理に充てることができれば、インバウンド産業の発展にもつながるはずだ。

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