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[44]配電システムを一貫生産 かわでん(南陽)

2015/12/27 17:14
配電盤の製造ライン。写真奥から手前にかけて徐々に部品が組み込まれていく=南陽市・かわでん山形工場

 東京スカイツリーや東京ドーム、羽田空港に関西国際空港…。これに霞城セントラルなど本県のランドマークを加えた施設の共通項は、配電盤や分電盤のメーカー・かわでん(南陽市、西谷賢社長)の製品が使用されている点だ。創業89年の納入実績は全国に広がり、電気が欠かせない現代社会の暮らしを陰で支える。

 配電盤、分電盤、制御盤、監視盤など配電制御システムの一貫生産を手掛ける。建物を人間に例えるなら電気は血液。施設内の各所に効率的に電気を送る配電盤と分電盤は心臓の役割を果たす重要な製品だ。

 南陽市にある主力の山形工場。広さ約2万3千平方メートルの工場内には、板金、溶接・研磨、塗装、配線加工・組み立て、検査の各エリアが設けられている。生産工程に応じて分業化された配電盤や分電盤の製造ラインには整然と資材が流れ、従業員たちが手際良く担当する部品を組み付け、完成に向かう。顧客に応じて仕様が違うカスタム型ながら、配電盤は30分に1基、分電盤は10分に1基のペースで生産が可能という。

■強みは生産能力

 業界は大量生産型の標準型、施設に合わせたカスタム型の製品を手掛けるメーカーに大別される。かわでんはカスタム型メーカーでは国内トップの売上高を誇る。中小を含めて競合他社は2千社以上あるが、こうしたカスタム型の生産能力の高さが強みだ。

 例えば40階建てのビルでは配電盤だけでも480基程度が必要。執行役員の安孫子勝行技術部長は「ほかの注文を受けながらこの規模を納入するとなると、他社が何年もかかるのに対し、うちは数カ月でできる」と優位性を語る。

 生産効率アップに向けた取り組みは1983(昭和58)年、業界では珍しいトヨタ生産方式の導入が大きな転換点になった。前年に自社開発に着手したコンピューター利用設計システム(CAD)で製図の精度や効率を向上させたことに加え、綿密な生産計画の下、必要な部品を必要な量だけ、必要な時にそろえる体制を整えてきた。

 工場内のエリア配置の見直し、工程ごとの進み具合をチェックするボードの導入などさまざまな改善を行い、現在の生産効率まで高めた。安孫子執行役員は「以前は板金部品だけ大量に作り置きし、組み立て時に在庫の山から2時間ほどかけて箱や扉を探すこともあった。資材探しの専門社員がいたほど」と話す。

 カスタム型のメーカーにとって欠かせないのは、きめ細かな顧客ニーズへの対応だ。施設の広さに応じた設計をはじめ、停電に備えて自家発電機を導入する際の配線の仕組み、非常用と通常用の盤の色分けなど、要求は多岐にわたる。特にオフィスビルでは賃貸料収入を少しでも上げるため、電気設備のコンパクト化に対する要求は高い。

■ノウハウを駆使

 同社は昭和30年代後半に研究部を設立し、今は技術部としてさまざまな研究開発を展開。昭和40年代までは遮断器や計器などの機器類を全て自社で製造しており、これまで培った配電盤に関する技術やノウハウを駆使して顧客ニーズの対応に当たる。

 近年はノイズ対策に着目。携帯電話など無線通信機器が普及する中、あらゆるノイズから機器類を守るため、盤の構造や配線の仕方を見直し、ノイズ対策に関する国際規格をクリアした製品も生み出した。「病院やデータセンターでノイズによる誤作動があれば多大な影響を招きかねない」と製品技術開発チームの佐藤祥和チームリーダー。時代の求めにいち早く対応する重要性を強調する。

 実績は信頼を生み、現在は世界的に有名な築地市場(東京)の移転先となる豊洲新市場などの仕事も請け負う。都心のビッグプロジェクトにも採用されるかわでんの製品は、本県ものづくり産業の底力の一端を証明している。

(ものづくり取材班)

かわでん 1926(大正15)年に創業し、40年に法人化。前身の川崎電気時代の62年に県内初の上場企業となった。バブル期の投資が財務を圧迫するなどし、2000年に民事再生法の適用を申請。いったんは上場廃止となったが、04年に再上場。15年3月期の売上高は約193億円。社員数は632人(11月末現在)。全国各地に営業拠点を持つ。製造拠点は山形工場(南陽市)と九州工場(佐賀市)。

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