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[29]電子部品生産装置を製造 ハイメカ(米沢)

2015/8/23 12:25
電子部品の生産装置の組み立てを行う若手技術者=米沢市・ハイメカ

 世界シェア75%を誇った。地球上にあるその分野の装置のほぼ9割に技術が使われ、売り上げは急激に伸びた。ITバブルといわれた熱狂から15年、ハイメカ(米沢市、亀森俊博社長)は変化に対応し、新たなステージを歩んでいる。

 タンタルコンデンサー生産装置。ハイメカの代名詞と言っても過言ではない。コンデンサーは電気を一時的に蓄える部品で、電圧を安定させる機能を持つ。希少金属のタンタルを使ったコンデンサーは機能性が高く、携帯電話やパソコン、薄型テレビと幅広い電子機器に使われた。バブルが膨らんだ2000年前後、需要は年間300億個に。その4分の3がハイメカ製の装置で生産され、売り上げは過去最高の80億円を記録した。「9割以上がタンタルコンデンサー関連。ほかの仕事を断って対応した」。亀森社長が振り返る。

 時流に乗ることができたのは技術と技能の蓄積があったからだ。商品となる装置はミリ単位の小さな部品を生産するものばかり。電子機器の小型化が加速し、加工する素子の位置をミクロのレベルで正確に決めることが要求された。これを機械の構造やモーター制御、画像処理による補正を組み合わせて実現した。

■微細溶接力に

 さらに創業以来育んできた「微細溶接」が大きな武器になった。小さな素子と回路などを溶接する技術だ。銅とアルミなど異なる金属の溶接を得意とし、全ての動きを精緻に制御して高速で加工を施す。生産速度は毎秒8~10個。ミクロン単位の精度で均一に部品を生み出していく。装置は高い評価を得て世界の標準機となった。

 しかし、その後、需要が高まる中でタンタルの価格が跳ね上がる。電子部品として採算が取れなくなった。ITバブルは崩壊し、タンタルコンデンサー関連装置の受注は一気に減少。転換を迫られた。

 代わって主力に据えたのが環境改善や新エネルギー分野。発光ダイオード(LED)やリチウムバッテリーの生産装置などだ。激変への対応を支えたのは、やはり技術とそれを守り、生かす人の存在だった。

複雑な機構を組み合わせた装置。高品質の電子部品を高速で生み出していく

 作るのは全てがオーダーメードの装置。納入先のニーズを正確に把握しなければならない。「コンセプトを共有する際、相手の文化や事情を理解する感性と教養、そして人間性が問われる。思いが通じて初めて、顧客に喜ばれる『美しい装置』ができる」。そんなトップの考え方は海外のサポート体制と人材育成に表れている。

■世界に供給網

 現在、取引のある企業は18の国と地域に広がる。必ず社員が納入先に出向き、どんな装置が必要なのか技術者らと膝を突き合わせる。その上で、設計から加工、組み立てまで各セクションの横断的なプロジェクトチームを編成し、形にする。設備の立ち上げにも全て立ち会う。

 そして人材育成。人間性を高めることを主眼に置き、役職ごとにきめ細かな社員教育を展開。人から人へ技術と「こころ」を伝えている。

 現在、タンタルコンデンサー関連の売り上げは全体の1割以下だ。納入先の秘密を保持するため装置ごとに仕切られた工場内。組み立てに当たる若手技術者の様子を見ながら亀森社長は語った。「過去の延長線上では未来はつくれない。常に変化に対応することが求められる。そのとき一番大事なのは目には見えない人の力だ」

(ものづくり取材班)

【ハイメカ】 1972(昭和47)年創業。宿泊設備のある研修所を持ち、診療所を設置して地域に開放している。2001年に県産業賞を受けた。社員数140人。今年6月期の売上高は20億円。

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