東日本大震災

震災9年、それぞれの再出発[5]・完 南相馬から米沢に

2020年03月15日
避難者支援センター「おいで」で働く上野寛さん。「追悼行事はできるだけ続けたい」と話す=米沢市
避難者支援センター「おいで」で働く上野寛さん。「追悼行事はできるだけ続けたい」と話す=米沢市
 「10年は果たして節目なのだろうか」。福島県南相馬市から米沢市に避難している上野寛さん(55)は今年1月、テレビを見ながら考えた。菅義偉官房長官は記者会見で、発災から10年を「一定の節目」とし、政府主催の追悼式は来年までを基本とする考えを示した。原発事故収束への道筋が見えない中、福島県の県外避難者は依然として3万人を超える。「収束に向けた行程がずれる中で、支援だけが節目として打ち切られないか」と懸念している。

 生花店を経営していた日常が、地震の揺れと津波によって大きく崩された9年前の3・11。翌日に分かった原発事故が、その後の人生をさらに大きく変えることになった。妻、息子、父母、妹一家の合わせて9人で米沢に避難したのが5日後の16日。以来続く米沢での生活も9年になる。米沢で家族も増え、孫にも恵まれた。

風化させない
 自身は、市が開設した避難者支援センター「おいで」に勤務し、避難者の現状を見詰めてきた。毎年3・11当日に米沢で開催される復興祈念事業(追悼式・復興のつどい)には、実行委員として企画運営に中心的に関わる。民間ボランティアや県、市などが協力して作り上げる行事の中で、避難者の声をしっかりと反映させることに努めている。

 追悼行事の企画で最も意識しているのは「震災を風化させないこと」。風化の理由の一つは、避難者の生の声を聞く機会がないためだと考える。行事の中で行う避難者代表のあいさつで、誰にどんな話をしてもらうのか。毎年、被災者や避難者を取り巻く環境を考えながら、その年ごとにテーマを据えて企画している。

 震災以来、さまざまなことに対する不信感から、自分がうたぐり深くなってしまったと思っている。冒頭の官房長官発言。「なぜこの時期に言うのか。何か別の意図があるのか」と勘繰ってしまう。10年を節目として区切りになる人もいるのは事実。だが、まだまだ区切りなどとは言えない人も多い現実を日々見ている。福島県に対しては、「避難者の現状を見て、政府と対峙(たいじ)しても県民の側に立ってほしい」と心から思う。

静かな3・11
 震災翌年から、毎年発生時刻の午後2時46分は、追悼行事の会場で忙しく動き回りながら迎えた。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で追悼行事がなくなり、3・11を「おいで」の事務所内で静かに過ごした。発災当時やそれからの9年間のこと、さらに、さまざまな決断を迫られてきた多くの避難者の顔が頭に浮かんできた。震災の被害はまだまだ終わっていない。「できる限り追悼行事を続けていきたい」。思いを新たに、慰霊の祈りをささげた。
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