東日本大震災

震災9年、それぞれの再出発[3] 支えられ今、看護の道

2020年03月13日
「周りの人に生かされてきたからこそ、人の気持ちに寄り添うことを大切にしたい」と話す佐藤海斗さん=山形市・山形大医学部
「周りの人に生かされてきたからこそ、人の気持ちに寄り添うことを大切にしたい」と話す佐藤海斗さん=山形市・山形大医学部
 普段通りの午後だった。体験したことのない揺れと津波が襲ってくるまでは―。山形大医学部看護学科3年佐藤海斗さん(21)=山形市=は、小学6年時に故郷の宮城県気仙沼市で被災した。未曽有の大津波は思い出の品々を自宅ごと押し流した。「たくさんの人に支えてもらった。今度は人を支える側になりたい」。将来のために学び、復興へ向かう被災地の姿を伝え続けることが、周囲への恩返しになると信じている。

■優しさに触れ
 卒業式を数日後に控えた2011年3月11日。一日の授業が終わり、下校を待つばかりだった。ふいに大きな横揺れが教室を襲った。縦揺れを感じ、とっさに机の下へ身を隠した。机の外に押し出されそうになるのを必死で耐えた。激しい揺れが収まって校舎の上階へ避難するとき、学校近くを流れる大川が目に入った。川底が見えるほど、水が引いていた。その後、津波は大川を逆流し、校舎の1階部分をのみ込んだ。

 その日の晩は、校舎の3階で友人や先生たちとカーテンにくるまり、身を寄せ合った。空腹と寒さで眠れなかった。夜が明け、屋上から自宅のある沿岸部を望むと、生まれ育った街は跡形もなかった。両親と弟は皆無事だったが、自宅は全壊。覚悟はしていたが、「本当にもう何もないんだ」と実感させられた。

 被災翌日に家族と再会できたが、そこからの数日間は記憶が今も曖昧だ。それでも、受け入れて世話をしてくれた親戚、「内緒ね」と言いながら1枚のクッキーを分けてくれた女性、避難所で活動していた災害派遣医療チームの医師や看護師、さまざまな人たちの優しさが強く胸に刻み込まれている。看護学科に進み、「支えてもらった分の恩返しをしたい」という今の考えにつながっている。

 自身の体験や、復興の歩みを進める故郷の姿を伝え続けることも大切にしている。大学進学後は、本県在住の気仙沼市出身者らでつくる「やまがた気仙沼会」の一員として、山形市内で開かれる「さんま祭り」の運営に参加。毎年3月11日前後には、故郷の被災直後と現在の姿を紹介する写真展で、来場者への説明役を担っている。写真展は今年も山形市の文翔館で15日まで開催しており、11、12日に会場に立った。

■人に寄り添う
 9年がたち、震災が当事者以外にとって「過去の大変な出来事」で片付けられていないか不安を感じる。古里にも人々の心にも大きな爪痕を残した一方で、自分のように立ち直って前を向いている人間がいることも知ってほしい。「自分の人生の芯には、間違いなく震災の経験がある。周りの人に生かされてきたからこそ、社会に出ても人の気持ちに寄り添うことを大切にしたい」。「3・11」が来るたび、その思いを強くしている。
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