寄り添う-被災地の本県ボランティア(1) 「緑水の森支援活動」代表 大谷哲範さん(山形)
2011年09月10日
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「熱い思いを持った仲間がいるから続けてこられた」と語る大谷哲範さん(中央)。「謙虚さ」を胸に刻み、津波で壊れた家で作業する=宮城県山元町
日焼けした肩に汗が光る。床板を運ぶ手に力が入る。「後悔したくないですから」。ボランティア団体「緑水の森支援活動」代表の大谷哲範(てつのり)さん(50)=山形市平清水=は連日のように宮城県石巻市や亘理町など大震災の被災地に入り、さまざまな支援活動を続けている。 この日は巨大津波で浸水した山元町山寺の宍戸昭治さん(69)方での作業。「大工さんがスムーズに作業に入れるように、床はがしと泥出しをお願いしたんだ」と宍戸さん。3月11日は避難準備中、津波に襲われ、2階に逃れた。「すぐ下はまるで海。死を覚悟した」。震災直後の苦しい時期、山形から来た愛犬家のグループに食料や水などをもらって感激したという。「きょうも山形の大谷さん。本当に助かる」 岩手県生まれの大谷さんの本職はミュージシャンだ。尾崎豊、織田哲郎などのツアーやレコーディングに参加、2009年に山形市に移り住んだ。同年春、高瀬地区の林道清掃などを行うボランティア団体を設立。薬物依存や引きこもりに苦しむ人を対象にカウンセリングにも取り組んでいる。 初めて被災地に立ったのは震災から3日後。仙台にある仕事先の音楽事務所や福祉施設などに支援物資を運搬した。その際、行政の手が届かない場所が少なくないことを知った。「ここで動かなかったら一生後悔する」。被災地通いが始まった。 震災1カ月で回った避難所は約100カ所。その多くが沿岸部の小さな漁村だ。食料を運んだり炊き出しをしたり。住民の声を聞き、何が必要か把握、率先してコーディネート役を務めた。 謙虚であること。横のつながりを大切にすること。「被災地ではこの2つをいつも心掛けている」 ボランティアの中には売名や金もうけを目当てにした人もいるという。感謝されて当然。これだけしてあげているのに…。心のどこかでそんな気持ちになってはいないか。いつも自問自答し「謙虚であること」を胸に刻む。 「被災地には熱い思いを持った人間がたくさんいる」。大谷さんは力を込める。「お坊さんや漁師、先生。震災がなければ恐らく出会うことのなかった仲間と出会えた。感謝している」 東京から音楽仲間を呼んで、石巻市の被災倉庫でライブを行う構想もある。題して「ローリングストーン計画」。震災で傷ついた古里の復興。それは被災地に立つボランティアみんなの願いだ。大谷さんも、その1点だけを見詰めている。
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