南相馬で山形の業者が仮設着工 放射線量確認しながら、46戸建設へ
2011年05月03日
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整地した建設予定地にくいを打ち込み、仮設住宅の建設が始まった=福島県南相馬市
「カーン、カーン」。同区西町の現場に、仮設住宅建設の第一歩となるくいを打ち込むつち音が響いた。同社はこの現場と近くの予定地に、合わせて46戸を建設する。初日は約20人で作業を始めた。 南相馬市は、沿岸部が津波で大きな被害に見舞われた。さらに、その後の原発事故の影響で4分の3程度が、立ち入り禁止となる「警戒区域」(半径20キロ圏内)か、以前屋内退避地域とされていた「緊急時避難準備区域」(半径20~30キロ圏内)に設定されている。作業現場は30キロ圏外だが、風評被害から仮設住宅の資材を運ぶ運送業者を探すのに苦労し、現場の関連作業を依頼した会社からも断られたケースがあったという。国が安全とした地域とはいえ、ここに来た作業員たちは、不安が全くなかったわけではない。同社現場責任者の池野英司課長(51)は作業員への感謝を口にした。 同社は、阪神大震災で50戸、新潟県中越地震で16戸、仮設住宅を手掛けた実績がある。池野課長は中越地震で現場を担当した経験者の1人だ。自分たちが建てた仮設住宅にうれしそうに入居する被災者の姿を記憶している。東日本大震災の被災者、避難者にも、早く安心して暮らしてもらいたい。中越地震の被災者の笑顔を思い出しながら、業務に当たっている。 組み立て作業をリードする酒井竹司班長(56)は、宮城県気仙沼市などの被災地の惨状を目にしてきた。「早く何とかしてやりたい」。作業現場のすぐ脇にある鹿島保健センターには、54人の南相馬市民が不便な中で生活している。その期待にも背中を押されている。 この現場での仮設住宅完成は今月下旬。床や壁、屋根の設置、電気工事と作業が進み、ピーク時には関連会社を含めて60人態勢になる。8月までに福島・宮城両県に計200戸を建設する予定だ。「一刻も早く家族で暮らせる住まいを」。使命感を胸に、黙々と作業を進める作業員の姿を、近くに住む男性(75)が見詰めていた。男性の自宅は何とか住める状態だが、多くの市民が仮設住宅を切望しているのをよく知っている。「このつち音が被災者の励みになる」。感謝のまなざしを向けていた。 【メモ】岩手、宮城、福島の3県がプレハブ建築協会(東京都)に建設要請している仮設住宅は3万2800戸。国土交通省は千葉、栃木、長野県と合わせ、7万2290戸が8月までに完成するとしている。福島県内では7月末までに1万4000戸を供給する計画。
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