「鳥海丸」住宅街を裂く 東松島市・加茂水産高の4代目実習船
2011年03月24日
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津波で住宅街に打ち上げられた「鳥海丸」(右)。がれきの中で座礁したようにも見える=宮城県東松島市
ほとんどのルートが遮断されている。辛うじて生きている橋も満潮時には渡れない。そんな石巻港に面する住宅街で、船は無残な姿をさらしていた。船体には、加茂水産高の実習船であることを示す「鳥海丸」の毛筆体。マスト近くには山形県のマークも。なぜ鳥海丸は三陸に…。 県教育委員会によると、この鳥海丸は、先に実習船を引退した4代目。今年1月に東京の業者が買い取った。石巻港で修繕のため停泊していたとみられるが、地元の造船会社に連絡が付かずはっきりしない。港湾関係者によれば、5代目となる新鳥海丸も同じ造船会社により建造され、湾内に停泊していたが、2月に完成。震災わずか3日前の今月8日、酒田港に移され難を免れた。 ![]()
津波で住宅街に打ち上げられた「鳥海丸」(右)。がれきの中で座礁したようにも見える=宮城県東松島市
熱海さんは強い揺れの後、本能的に津波の危険性を感じ、近所の人の車に乗って小学校に逃げた。途中、来月出産予定だった孫娘(30)と擦れ違い「海の方にいっちゃだめ」と声を掛けたが、それが最後の姿だった。2日後に近くの路上で遺体で発見。「ひ孫が生まれる予定だった。かわいそうに」。トラック運転手の息子(51)も安否不明のままという。 更地で立ち尽くす男性に会った。同市横沼、千葉照雄さん(71)。実は勤務する運送会社があった場所だという。トレーラーの一部が転がっているが、事務所と車庫の基礎すらない。震災直後から避難所暮らしで、初めて訪れたという。「社長とも同僚とも連絡が取れない。壊れているとは思ったが、こんなんじゃ」。後は声にならなかった。 海水が引かず湖のような田畑で、ゾンデ棒を持って遺体捜索を行う自衛隊員が行き来する。家の中まで重油と泥が入り込み、大量のがれきで露地に重機が入っていけない。津波から2週間となるが、復興へのつち音を奏でるには、まだ時間がかかりそうだ。 ![]()
大曲幼稚園の卒園式で、修了証書を手にして見つめ合う母子=宮城県東松島市・矢本中央幼稚園
卒園する園児は8人。全員が無事だった。幼稚園は地震発生から休園しており、この日が13日ぶりの再会。津波の影響で幼稚園は水没したため、卒園式は急きょ近くの矢本中央幼稚園で行われた。 式には避難のため本県や沖縄県に身を寄せた2人を除く6人の園児と保護者、地域住民が参加した。津田真一園長は式辞で「大曲幼稚園は水の中に沈んじゃった。でも、(津波が押し寄せる中)最後の最後まで先生たちは職員室のロッカーの上で幼稚園を守ろうとした。そのことだけは分かってほしい」と園児たちに語り掛けた。 卒園証書を受け取った園児たちは母親と父親の元に駆け寄り、誇らしげに証書を見せ「ありがとう」とほほ笑んだ。地震発生後、数日、子どもの安否が確認できなかった保護者も多く、無事、卒園できたことに感極まり「本当によかったね。ずっと一緒にいようね」。涙を流しながらギュッと抱き締め、わが子の成長と命のぬくもりを確かめていた。 東日本大震災 記事一覧
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