異変-生態系クライシス

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第3部・外来生物(6) オオキンケイギク

2023/5/31 12:24
特定外来生物のオオキンケイギク。さまざまな場所で繁殖している=山形市・馬見ケ崎川河川敷

 山形市の馬見ケ崎川河川敷を歩いてみると、斜面に小さな黄色い花が咲いているのが目に留まる。初夏の柔らかな風に揺れるかれんな姿に、思わず手を伸ばしそうになるが、その正体は特定外来生物に指定された「オオキンケイギク」。生態系を破壊する侵入者だ。

 オオキンケイギクが国内に侵入して既に100年以上が経過し、今や全国に根を下ろしている。本県では一時期、園芸用や緑化資材として盛んに栽培されたことから全域に広がった。県の調査によると、過去に栽培されていたものが放棄されるなどして野生化したケースもあるという。

 植物が分布域を広げる手段の一つが人による拡散だ。国は外来生物法で特定外来生物の取り扱いを厳しく制限している。きれいな花に誘われて「持ち帰って植えよう」とする何げない行動が、日本固有の生態系をかく乱することにつながりかねない。

 オオキンケイギクは北米原産で、キク科の多年草。高さ30~70センチで、5~7月に花を咲かせる。国立環境研究所などによると、1880年代に観賞用や緑化用として持ち込まれた。道ばたや河川敷、空き地など日当たりの良い場所を好んで群生し、沖縄を含む全国で見つかっている。

 繁殖力が強く、カワラナデシコやカワラサイコなど日本に昔からある植物を駆逐してしまうことから、2006年に特定外来生物に指定された。日本生態学会がまとめた「日本の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれている。

 きれいな見た目とは裏腹に、生態系をかく乱する厄介者だが、植物の生態に詳しい山形市野草園職員の佐藤友宏さん(63)は「オオキンケイギクのある風景が当たり前になっていることが問題だ」と指摘する。

 外来生物法は特定外来生物の飼育や栽培、保管、運搬、販売、譲渡を禁じており、違反した場合、個人は3年以下の懲役または最大300万円の罰金、法人は最大1億円の罰金が科される。野外の花を掘り起こして別の場所に運ぶだけで違法行為となり得るが、危険性が一般に浸透しているとはいえないのが現状だ。

 佐藤さんは外来植物に関する理解を深めることが肝要とする。自治会を通じた住民同士の情報共有や新聞などによる効果的な情報発信の必要性を訴え、「みんなが外来植物について知り、力を合わせれば根絶することができるかもしれない」と展望する。

 外来植物の拡大を抑えるためには、駆除と同時に拡散しない努力を続けることが不可欠。生態系に影響を与えるのは地球温暖化など世界規模の環境問題だけではない。一人一人の入れない、捨てない、広げない行動が環境を守る第一歩となる。

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