異変-生態系クライシス

>>山形新聞トップ >>異変-生態系クライシス >>第3部・外来生物(2) 「人気者」への新規制(下)

第3部・外来生物(2) 「人気者」への新規制(下)

2023/5/27 12:54

 県内をはじめ日本各地の用水路で見かけるアメリカザリガニと、祭りの屋台などで「ミドリガメ」として売られるアカミミガメは飼育用として子どもたちの人気を集めてきた。生き物観察の題材として教育現場でも活用される。今後、「条件付き特定外来生物」に指定されることで、野外への放出などが禁止される。

 特定外来生物には外来生物法に基づき、現在は淡水魚のブルーギルなど156種類が指定されている。アメリカザリガニとアカミミガメは「飼育目的ならば可」という条件付きで6月1日に新たに加わる。違反した場合は懲役3年以下か300万円以下という厳しい罰則が科される。私たちは「飼うのが飽きたから逃がす」という考えや行為を改める必要がある。

外来生物捕獲イベントでアメリカザリガニを数える参加者=鶴岡市

 アメリカザリガニもアカミミガメも、人の手によって国内に入ってきた。飼育するには「命」と向き合う覚悟がこれまで以上に求められることになる。

 アメリカザリガニは昭和初期、ウシガエルの餌として日本に持ち込まれた。逃げ出した個体が繁殖し、日本各地に定着した。在来の水生生物を消失させたり、水生昆虫の局所的な絶滅を引き起こしたりと、問題となっている。環境省によると、2020年の推計で65万世帯、540万匹が家庭などで飼育されているという。

 アカミミガメは1950年代後半に幼体が「ミドリガメ」の通称でペットとして輸入された。19年の推計で野外にいるのは約930万匹、飼育されているのはおよそ110万世帯、160万匹。20~30年ほど生きて巨大化するため、途中で飼えなくなり、放棄されるケースがある。ラムサール条約に登録されている鶴岡市の上池・下池などにも生息しており、同市自然学習交流館ほとりあによると、産卵のために陸に上がる夏場に見つかることがあるという。

 6月から「条件付き特定外来生物」となる2種は生態系に影響がありながらも、他の特定外来生物と全く同じ規制をすると、遺棄される数が増えかねないことから、飼育や譲渡禁止などの規制を適用除外とするかどうかの議論が長く行われてきた。外来生物法は特定外来生物の▽飼育▽輸入▽譲渡▽放出―を原則禁止する。環境省外来生物対策室はその中でも「増加を防ぐために一番重要なのは野外放出しないこと」と強調する。

 飼育の継続が困難になった場合にはどうするか。同室は▽引き取り先を探して、責任を持って飼える人に譲渡する▽地域で引き取り飼育を行う事業者を探す―などの対応を求める。それでも引き取り先が見つからない場合には、やむを得ず殺処分することになる。「人気者」2種の指定は、飼育には命を背負う「責任」が伴うことを考えるきっかけになる。

[PR]
異変-生態系クライシス
[PR]