第2部・引きつける魅力(5) 自治体や企業、広がる取り組み~幸せの羅針盤|山形新聞

幸せの羅針盤

第2部・引きつける魅力(5) 自治体や企業、広がる取り組み

2020/12/8 07:47
天養寺観音堂付近のホトケヤマ展望台から望む飯豊町の散居集落

 脈々と受け継がれてきた自然との共生、移住者を引きつける先人の魅力など、SDGs(持続可能な開発目標)の理念と重なる営みは、高畠町以外の市町村でもみられ、新たな“芽”も出始めている。

 優れた取り組みを行う自治体を国が選定する「SDGs未来都市」に本県からは飯豊町と鶴岡市が選ばれている。企業による取り組みの輪も広がる中、山形新聞社などは県民運動としての機運醸成に向け、「共同宣言」を行った。

■三方良し

 飯豊連峰をはじめ、散居集落や置賜白川などの自然と調和した暮らしを守り続けてきた飯豊町。経済、社会、環境の“三方良し”に重きを置くまちづくりはSDGsとの親和性が高い。2018年6月、県内の自治体で初めて「未来都市」に選ばれた。

 町は循環型社会を目指す挑戦的な取り組みを加速させている。牛の排せつ物などから発生するガスで発電する「バイオガス発電所」が今夏に完成。蓄電関連産業の集積を目指す「飯豊電池バレー構想」の推進、景観や環境に配慮したモデルタウンの整備により、地域経済の好循環を描く。

 昨年からは町報の各記事に目標のアイコンを付け、町民の生活とSDGsを関連付ける連載を始めた。町の担当者は、住民に国連が提唱する目標を「自分のこと」として捉えてもらう段階に入っているとし「持続可能なまちづくりは、一人一人に小さな行動変容を促すことが必要。今の暮らしを未来につなげていくのは、他でもない『私たち』なのだから」と強調する。

鶴岡市の田園地帯に立地する「鶴岡サイエンスパーク」(小型無人機ドローンで撮影)

 鶴岡市は今年7月、「未来都市」に選定された。メリットの一つとして、国の地方創生関連事業の採択で優位になることが挙げられるが、「SDGsの取り組みは避けて通れない時代」と市の担当者。製造や流通など各業界の発展にSDGsが不可欠な要素になりつつある中、市が先導役として素地をつくる必要があるとの認識を示す。

 研究成果が世界的に注目される慶応大先端生命科学研究所を核に、バイオベンチャー企業などが集積する「サイエンスパーク」を軸とした公民連携を進める同市。SDGs登録認証制度の創設をはじめ、市内の大学や研究機関、地域の金融機関を中心とする推進母体・プラットフォームの設置を目指す。この二つを連動させ、SDGsの浸透を図る考えだ。

■17のドア

 新型コロナウイルス禍で先行き不透明な状況だからこそ、持続可能な社会を構築するための機運醸成が求められている。地域密着、地域貢献を社是とする山形新聞社は8月、県、山形大とともに、SDGsの推進に向けて連携して行動するとした「共同宣言」を行った。

 SDGsを深く知りたいという県民の関心の高まりを受け、大学や企業の専門家を講師としたセミナーを既に2回開催し、企業や自治体が実践すべき内容や、17ある目標を理解し主体的に行動する重要性などを広く伝えてきた。情報発信・交流の場となるプラットフォームをフェイスブック上に開設するなど、誰もが気軽に参画できる仕組みを整えている。

 セミナーの講師を務めた東北芸術工科大企画構想学科の山縣弘忠准教授は「SDGsの視点を通して既存の事業、資源を俯瞰(ふかん)してほしい。必ずできる取り組みはある」とし、企業や組織の取り組みのポイントを示す。17の目標を「17のドア」と表現し「全てのドアは中でつながっている。入りやすいドアから入ることが重要だ」。

 自治体の未来都市選定を巡る取り組みをはじめ、山形新聞社と県、山形大による共同宣言は、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に合致する。共同宣言では、行動・実践の共同指針として▽互いに協力・連携し、活動を加速する▽それぞれの事業をSDGsの実現に結び付く取り組みとして磨き上げ、多くの県民の主体的な参画を求める―などを盛り込んでいる。

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