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SDGs×飯豊町(上) まち・むらイノベーション

景観や環境に配慮した高気密・高断熱の次世代型省エネ住宅「飯豊型エコハウス」のモデルハウス=飯豊町椿

 過疎に悩む飯豊町は、若い世代のUターンなど移住定住を促進しようと、2019年に置賜農業高飯豊分校跡地に住宅団地「エコタウン椿」を造成した。ただの分譲地ではない。建築条件は、景観や環境に配慮した高気密・高断熱の省エネ住宅「飯豊型エコハウス」を、町内の建築業者が建てること。環境保全と経済振興の両面を見据えた取り組みだ。一般分譲の20区画に5軒が建ち、このうち3軒はUターン世帯という。

 SDGs(持続可能な開発目標)は経済、環境、社会の三つをバランス良く整えることで達成できるとされる。同町は18年に県内自治体で初めて国の「SDGs未来都市」に選ばれ、「循環」と「自給」をキーワードに環境に優しい町づくりを進めている。

 「飯豊型」は、町の美しい景観を守るために▽県産木材75%以上使用▽町の景観に適合したデザイン―なども盛り込んだ。県が認証する「やまがた健康住宅」とタイアップし、断熱や気密など性能基準を満たしているため、建築費の利子補給を受けることができる。

 同町の新築住宅は年間20軒ほどだが、大半は大手住宅メーカーなど町外の業者が手がける。それだけ町外にお金が流出していることを意味する。建築条件は町内でお金を循環させるための仕組みだ。併せて、町内建築業者が次世代型省エネ住宅を建てる技術力などを高める研修会も開き、全体のレベル向上を図った。

 さらに町は「飯豊型」を町内全域に普及させるため21年度に「飯豊で幸せになる条例」を施行。住宅の新築・購入に奨励金30万円、さらにI・Uターン世帯などに30万円、町内業者による飯豊型の新築に30万円などを加算し、最大100万円の助成制度を設けた。

 国も省エネ住宅の普及を後押しする。今年6月の法改正で、25年度から新築住宅の省エネ義務化が決まった。「2050年の脱炭素化」実現に向け、日本全体のエネルギー消費の中で3分の1を占める住宅や建築物に着目したからだ。町や町内建築業者は、国策に先駆けて準備をしてきたといえる。

 「行政が舞台を整える。町内工務店は生き残りを懸けて腕を磨いてほしい」。担当課長として制度設計を担った高橋弘之副町長。「いずれ住宅の省エネ基準が上がるか、義務化されることを見込んで『飯豊型』を導入した」と話した。

2022/12/25 16:04
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