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第10部・大学の力 トップに聞く(3) 東北文教大・鬼武一夫学長

2018/10/31 11:25
若者の県内定着に向け、鬼武一夫学長は「子どもたちの山形県を愛する気持ちを育みたい」と話す

 小学校教員や保育士などの人材養成に力を入れる東北文教大は2010年に開学した。同大で学びを深めた卒業生の指導が、次代を担う子どもたちの県内定着に大きな影響を与えることになる。鬼武一夫学長(76)は今の教育には郷土愛の醸成が最も求められるとし、中国黒竜江省と取り組む介護人材育成事業の重要性も強調する。

 ―大学の現状は。

 「入学者のうち県外出身者が占める割合は2割ほど。他県から多様な学生が入ってくることが大事なので、もう少し増やしていきたいと考えている。正直、大学運営で厳しい面はあるが、追い風になっているのは就職実績がきっちり出始めたことだ。2018年度までで計84人が小学校の教員に就き、19年度については20人の採用が決まっている。(県内で)これまでに教員を辞めた卒業生は一人もおらず、地域から評価をいただいている」

 ―子どもの数が減る中、志願者の確保に向けた方針は。

 「教員養成を大学の中心に据えていたが、教育の幅を広げるため新学科設置を検討している。少子高齢化、外国人労働者の受け入れなどさまざまな問題を前に、どのような人材が必要になるのかを考えなければならない。今は少し時間がたつと物事が全て変わってしまう時代だ。就職後に『私はこれしかできません』では困る。周囲の状況に応じて活躍できる人材を育てなければならない」

介護実習の報告会に臨む東北文教大短期大学部人間福祉学科の学生。同大は中国黒竜江省と連携するなどし、介護人材の育成に力を入れる=山形市

 ―県内外に多くの大学がある。若い世代の県内定着に向け、文教大が担うべき役割をどう考えるか。

 「県内ではそれぞれの大学が比較的異なる特徴を持っている。だから協力関係を築きやすいと思う。その中で私たちが自負しているのは、教育のきめ細やかさだ。一人の学生に何らかのサポートが必要となれば、すぐに教員間で話し合って対応できる。小さな大学ならではのメリットがあるので、規模を嘆くのではなく生かしていきたい。ただ若者の県内定着に向けては、大学だけで何とかしようとしても難しい。各大学はいろいろ取り組んでいるが、それにより定着率が上がったのかなどを検証し、率直に意見交換する必要がある」

 ―中国黒竜江省との連携事業に着手した。狙いは。

 「今、介護分野がすごく大事になっている。日本では施設がどんどんでき、出口(就職先)は間違いなくあると言える。一方の中国でも、高齢化社会を見据えたマンションなどが次々と建てられているが、そこで働く人材の確保は遅れている。黒竜江省は『日本は人材育成が一番進んでいる』と考えている。私たちが中国から人材を受け入れ、何年間かは山形県で働いて介護の力を養ってもらい、帰国後に母国で活躍してくれるようなサイクルを回していきたい。県にも恩恵があるだろうし、大学として国際交流にも貢献できる。橋渡し役として地域の役に立つという視点を大切にしたい」

 ―県教育委員会は郷土愛の醸成事業により、児童生徒の県内定着・回帰を促進しようとしている。

 「私が山形県に来た30年前、県内でも有名な鳥居のことを知っている学生は誰もいなかった。また現在、大学を訪問してくる中学生に、山形県の木や魚などを聞いても全く答えられない生徒がいる。本県のことを知らずに『山形に残れ』と言っても無理。単純だが山形を愛する気持ちを育み、山形の良さを小さいころから学んでもらうことが重要だ。大学でも新たな学科に『山形学』を取り入れたい。小学校で山形について学び、そして今度は学生になり大人の目で山形を見る。そのような人材育成が大切だ」

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