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第9部・空き家解消への道(4) 川西町・行政代執行

2018/9/29 15:26
町の行政代執行で解体準備が始まった倉庫兼車庫。向かって左に傾き、倒壊の危険が高まっていた=2016年12月、川西町上小松

 空き家は発生しないに越したことはない。もし発生しても空き家バンクなどを通じて第三者が有意義に使ってくれるならありがたい。しかし活用がままならないほど傷んでしまった空き家は、解体・撤去こそが根本的な解決策だ。

 解体・撤去は持ち主が行うのが大原則だ。しかし、現実には費用面がネックになったり、そもそも所有者が不明だったりして放置されるケースも多い。そこで危険な空き家を減らそうと、2015年に全面施行された空き家対策特別措置法では、最終的に自治体が強制的に撤去する行政代執行が可能になった。

 同法に基づき川西町は昨年、地域に悪影響を与える恐れがある「特定空き家」2件を行政代執行で撤去した。しかし同法施行から3年余り経過しても、県内で代執行が行われたのは、所有者が不明の場合の略式代執行を含めてもこの2件だけ。その川西町でも“伝家の宝刀”を抜くまでには、所有者が管理すべき財産を町が取り壊すことへの抵抗感と、倒壊した場合の危険性という板挟みの中で、苦渋の決断があった。

 川西町が昨年、県内初の行政代執行で撤去した空き家は、町中心部にある築60年以上たった倉庫兼車庫。隣接する店舗側に傾いた状態で、地元自治会が数年前から町に「倒壊の危険がある」と相談していた。

 空き家対策特措法の施行を受け、町はこの建物を特定空き家に認定し、所有する山形市内の男性に改修・解体の指導、勧告、撤去命令を行ったが「経済的に難しい」として応じてもらえなかったという。

建物が解体・撤去された現在の倉庫兼車庫跡

 当時からこの件を担当する町住民生活課の滝田浩一課長(57)は当時を振り返る。「個人の財産に町が手を掛けることにはかなり抵抗があった。しかし隣家側に倒壊すればもちろん大変だが、幹線道路沿いなので通行人に危害が及ぶ恐れもある。『所有者本人に伝えてある』とは言っても、町の責任が全くないわけではない、と悩んだ」

 行政代執行の場合、費用は全額、所有者に請求することになる。町は所有者と話し合った結果、費用は延滞金も含め数年かけて分納するという誓約書を書いてもらい、代執行に踏み切った。もう1件の代執行でも所有者との間で同様の手続きを踏み、費用はその後、どちらも毎月きちんと納められているという。

 「本音を言えば(行政代執行は)やりたくなかった。苦渋の選択だった」と滝田課長。ただ「代執行を行うことで、町は空き家対策に本気で取り組むんだ、という意思を町民に示す意味もあった」と語る。

 県建築住宅課によると、県内では特措法施行から今年3月までの累計で、7市町が計343件を特定空き家に認定している。にもかかわらず川西町以外では代執行まで至っていないのはなぜだろうか。同課は「本来、所有者の責任だという大原則があるし、費用を回収できるかという問題もある。また『放置しても自治体がやってくれる』という所有者のモラルハザード(倫理観の欠如)を助長する恐れもあって、なかなか踏み切れないのではないか」と分析する。

 川西町でも残る1件の特定空き家は、子供が相続を放棄しており、町が相続の可能性がある親族の意思確認を進めているが、なかなか進まないのが現実だ。町内の空き家は2012年の調査で約250件だったが、今年は約420件に増えている。「空き家が年々増える中、『相続放棄すればいい』という安易な考え方が広まるのが怖い」と滝田課長。究極の解決策に見える代執行も、決して万能薬とは言えない。

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