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第9部・空き家解消への道(3) 官民の再生事業

2018/9/28 12:17
空き家再生事業に参加した東北芸術工科大の追沼翼さん(左)と長利咲代子さん。販売物件の模型や広報物作りなどに携わった=山形市

 本県の空き家率は2013年時点で約10%。これが20年後には24%ほどに倍増するという。県が公表している住宅・土地統計調査と民間シンクタンクによる推計だ。要因の一つが低調な中古住宅の流通とされる。本県の場合、利活用可能な空き家は約1万3900戸あるが、市場に出回るのは900戸程度にとどまっている。

 いかに空き家の利活用を促進し、現状を打開していくか。県、上山市、東北芸術工科大、県すまい・まちづくり公社は、連携協定を締結した上で空き家再生プロジェクトを展開している。3年ほど前から準備を進め、子育て世代向けに改修した上山市内の第1号物件は、このほど販売先が決定した。

 生まれ変わった築30年以上の木造平屋住宅に、完成内覧会では市内外から多くの人が訪れ注目を集めた。デザインを担当した同大建築・環境デザイン学科の馬場正尊(まさたか)教授は説明する。「新築並みの物件に改修した。仕方なく中古住宅ではなく、あえてリノベーション住宅なんです」

 県、上山市、東北芸術工科大、県すまい・まちづくり公社が手掛ける空き家再生プロジェクトは、建物を買い取って改修し、販売する過程で、それぞれが持つ強みを生かそうという試みだ。地域活性化を目指し、子育て世代を販売相手に展開した第1弾では、東北芸術工科大がデザイン、販売プロモーションなどを担当した。

 第1号物件となったのは、1982(昭和57)年に建てられた上山市にある木造平屋の住宅(延べ床面積86.95平方メートル)だった。施されたのは、現代的なライフスタイル、住む人の好みに合わせて建物を改装するリノベーション。畳の和室をフローリングにし、間取りも変更してキッチンを日当たりのいい場所に移動した。床や壁などは全面的に断熱化して基本的性能をアップさせ、「子育て世代が欲しくなる家」(馬場正尊教授)にモデルチェンジした。

 一連の作業に加わった東北芸術工科大の学生有志は模型作りや、完成内覧会の広報物作製などを担当した。見学者などに新たな家のデザインを確認したり、住宅の全体像を把握したりしてもらうためのものだ。

 建築・環境デザイン学科2年の長利(おさり)咲代子さん(20)=青森県出身=は「めったにない機会。(自身の)模型作りの技術向上につなげたい」との思いで参加した。模型は住宅の平面図や写真などを参考に、紙で発泡スチロールを挟んだ素材で制作。完成内覧会では受付も担当した。事業に携わるうち、これまで考えることが少なかった空き家への意識が高まったという。「見過ごしてしまいがちだけど、山形には空き家がたくさんある。今後、リノベーションが大切になると改めて感じた」

 修士課程デザイン工学専攻1年の追沼翼さん(23)=仙台市=は、山形市中心部にあり、かつて多くの文化人が集った「郁文堂書店」の再生に取り組んだ経験があり、今回の事業に魅力を感じて参画した。現地調査、完成内覧会の広報物作製などに携わり、「上山には使える空き家がたくさんある。再生して人の手に渡るまで、魅力的に変わる流れを見ることができて良かった」と刺激を受けた様子だ。

 馬場教授は、官民が連携して取り組んだ今回のノウハウを多くの人が共有することが重要だと強調する。特にこれから社会で活躍する学生たちにとって、空き家問題は今以上に身近で避けては通れない課題になる。「空き家は何かと深刻な問題に思えるが、人口減少によって起こるいわば当たり前の現象。ならばリノベーションによる新しい暮らし方を提供するなど、楽しむ視点も重要」と提案する。

 上山市の担当者は、学生も巻き込んだ今回の事業を「定住促進に向け一つの武器になる」と受け止める。一定の成果を挙げることができたのは、これまでに市が関係団体と空き家を巡る連携協定を結び、利活用する下地づくりに注力してきたことが大きかった。「子育て世代だけでなく、若者の移住者向けに改修するなど、第2弾、第3弾の事業展開を考えていきたい」と次を見据えている。

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