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第8部・増やせ交流人口(3) 河北町・ツアー受け入れ

2018/8/29 15:09
夏の陣で河北町を訪れ、地元産トマトを使ったソースの瓶詰め作りを楽しむ小出真澄さん(手前右)と首都圏の参加者=同町・田井ふれあいセンター

 東京いなごチーム―。河北町で食べ尽くし、飲み尽くし、買い尽くしていくその団体のことを、ある町民は愛情を込めてそう呼ぶ。

 その一行とは、約2年前から年に数回のペースで河北町を訪れ、食や農を満喫しながら町民らと交流を深めている首都圏のグループだ。もともとは食にこだわる医療従事者などを中心とした10人ほどだったが、会員制交流サイト(SNS)や口コミでその輪が広がり翌年は25人に拡大。そして今年は6人のシェフを含む約40人に膨れ上がり、大型バスをチャーターするまでになった。

 このグループを立ち上げ、引っ張っているのが都内で料理教室を主宰する会社員小出真澄さん(55)=東京都文京区白山=だ。河北町との出合いは仕事で山形エリアを担当していた5年ほど前。知り合った町内のイタリア野菜生産者から、台風で実が割れ規格外になったトマトを送ってもらったのが縁という。

 自家製トマトソースに瓶詰め加工して知人らに配ったところ大好評。その後、友人や知り合いのシェフを連れて畑を見に来て以降、居心地の良さに引かれ、毎年自らツアーを企画している。今では、かほくイタリア野菜研究会のPR大使も務める町の応援団だ。

 東京都内で料理教室を主宰する会社員小出真澄さんらのグループは“夏の陣”として先月14~16日にツアーを行った。参加者の大半は、小出さんの教室の生徒や仕事の仲間たちだ。その一行を、河北町内のイタリア野菜研究会メンバーや商工会関係者などが「いらっしゃい」ではなく「お帰り」と迎える。

 「東京の人たちは『いつでも来ていいよ』と言ってもらえる“よりどころ”を探している。親戚みたいに温かく接してくれる河北町は参加者にとって故郷以上に居心地がいい」と小出さんはほほ笑む。

 一行は、オリーブオイルとバジルで作るトマトソースの瓶詰め作りを体験し、トマトが栽培されている畑などを見学。ランチに町名物の冷たい肉そばを味わい、夜は町内の焼き肉店でブランド牛を食べながらの宴会と、夏の河北をとことん満喫した。

 滞在のメインは公民館を貸し切り町民や県内のさまざまな分野で活躍している人などを交えての大宴会。地元の酒や肉、野菜などの食材を持ち寄り、ツアーに同行した一流シェフらが調理するイベントで、今年は都内にある完全紹介制の名店「ステーキEda」の枝沢竜太シェフ(38)らが腕を振るった。

 熱い思いで農業と向き合っているイタリア野菜研究会と、本物を求めるシェフたちがツアーを機につながり、取引開始や納入先の紹介などに結び付いている。そうした動きはイタリア野菜にとどまらず、他の農畜産物や肉そばなどにも拡大しつつある。

 「一般の参加者の中でも都内の展示会などで河北町産を見つけると、親戚が来たというぐらいの勢いで情報が回り、みんな買いに行くという現象が起きるんです」と小出さん。こうしたファンの中には、町にふるさと納税で協力する人も少なくない。

 イベント目当てにたくさんの人が訪れるものの、一時的なにぎわいで終わってしまう地方ツアーが多い中、河北町の関係者が目指しているのはもっと強いパイプで結ばれた息の長い交流だ。ツアー受け入れの中心的な役割を果たしている町商工会の芦埜貴之商工振興課長(45)は参加者、受け入れ側双方が、互いに何かを「してあげる」「してもらう」関係をうまく築き始めていると喜ぶ。

 ツアーの回数を重ねるごとに、受け入れる側の意識も高まりつつある。3連休の繁忙期に店を貸し切りにしたり、焼き肉店で普段はやらない調理のデモンストレーションをしたり、工場見学をさせたりと個々の町内商工業者は協力的だ。

 しかし、問題はそうした協力者をコーディネートし、ツアー客が求めていることとマッチさせる人の存在だ。芦埜課長は「現在の環境では限界があり、組織的な受け入れ態勢の構築が必要」と強調。同様のツアーが増加していくであろう将来の課題をしっかり見据えている。

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