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第8部・増やせ交流人口(1) 海外クルーズ船

2018/8/27 14:34
酒田港で写真に納まる「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客たち。この日、酒田市の中心街は外国人であふれた

 酒田市の中心商店街は7月1日、外国人であふれ普段と違った様相になった。英国船籍で米国の船会社が運航するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が酒田港に寄港し、乗客らが港からのシャトルバスなどを使って続々と訪れた。

 船の乗客は約3千人で米国人や英国人、オーストラリア人など外国人が8割を占め、乗員も千人余りに上った。その7割が市内に繰り出したり、オプションのバスツアーで周辺観光地を訪れたりしたという。「商店街にこんなに外国人がいるのを初めて見た」と驚く声が市民から聞かれた。

 この船は7月17日にも酒田港に寄港し、やはり外国人を中心に多数の乗客、乗員が中心街に足を運んだ。船が早朝に入港するため1日は開店前の商店も多かったが、17日は開店時間を早めた店が目立った。

 「事前に外国人客への対応を学ぶなど準備はしていたが、実際に来てみるとすんなりいかない。日本人客と同じようにサービスの質を高くすることが大事だ」と中通り商店街振興組合の菅野弘幸理事長(51)。街の活性化につながると期待が大きい外国クルーズ船の受け入れは始まったばかりだ。

 英国船籍のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が酒田市の酒田港に寄港した7月1日、港から市中心部までシャトルバスで移動し、山居倉庫や日和山、旧鐙屋などへ歩いて向かう外国人客も多かった。

 案内役として活躍したのが高校生や大学生のボランティアガイド。港や商店街、観光施設などで身ぶり手ぶりを交え、英語で案内に挑戦していた。

 その後、乗客だったオーストラリアの高校教師から市にお礼の手紙が届いた。「酒田の高校生が一生懸命案内してくれた。自分の学校の生徒と交流させたい」

 中学生も頑張っている。8月2日にはパナマ船籍のクルーズ船「コスタ・ネオロマンチカ」が酒田港に寄港したが、酒田六中の1年生が授業で作ったオリジナルの観光パンフレットを港で乗客らに配った。

 この船は乗客約1200人の3割ほどが外国人だった。「学校で英語のやり取りを練習したが、初めて外国の人を前にして言葉がうまく出てこなかった。緊張したけど楽しかった」と佐藤はぐみさん(12)。冨樫歩華さん(12)は「パンフレットを開いてお勧めの場所を伝えた。先生に助けてもらい外国人に通じた時はうれしかった」と話す。

 インバウンドやクルーズ船の寄港を拡大する上で生徒や学生のボランティア確保は重要だ。外国人に分かりやすく伝えるため身近な歴史や文化を学ぶことは、将来の地元定着につながるかもしれない。生きた英語を学習する機会にもなる。

 外国の船会社が運航する外国クルーズ船の酒田港への寄港は昨年8月の「コスタ」が初めて。昨年はこの1回だったが、今年は「ダイヤモンド」2回、「コスタ」1回で計3回に増えた。来年は「ダイヤモンド」4回、パナマ船籍の「MSCスプレンディダ」1回の計5回予定されている。さらに拡大していくことが課題だ。

 外国クルーズ船は千人単位の観光客が乗船し、寄港地では観光や飲食、商品の購入など大きな経済波及効果が見込める。

 「一気にたくさんの人が船から下りてくる。受け入れには周辺市町村との連携が必要だ」と国土交通省酒田港湾事務所の玉石宗生所長。「クルーズ船はリピーターが多く、港からのツアーも毎回違う場所に行けるような多彩なメニューが求められる」と指摘する。

 「ダイヤモンド」が7月1日に寄港した際、酒田港から観光地へ向かうオプションのバスツアーは8コース運行された。市内観光や加茂水族館、羽黒山、最上川舟下りなどが人気を集めたが、寒河江市でサクランボ狩りを楽しむコースもあり、波及効果は最上、村山地方にも広がった。

 「外国人は寺など国内の観光客とは違ったところに関心を持っていた。気付いた点を今後に生かしたい」と永田斉酒田市地域創生部長。商店街では思わぬ商品がよく売れたといい、品ぞろえを工夫する店も。外国クルーズ船のインパクトは大きく、寄港拡大に向けた戦略が問われる。

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 人口減少が進む中、交流人口拡大が地域の活性化に欠かせない課題となっている。年間企画「山形再興」第8部は県内の新たな動きを追い、課題を探る。

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