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第5部・高校生と共に (4)鶴岡中央・シルクガールズ

2018/5/22 09:28
「鶴岡シルクの良さをもっと知ってほしい」。絹のまち鶴岡の顔として活躍するシルクガールズ=鶴岡中央高

 鶴岡中央高で被服を学ぶ生徒たちによるシルクガールズは、庄内で発展した絹産業の再興を目指す「シルクタウン・プロジェクト」が進行する「絹のまち鶴岡」の顔として成長し、情報発信力を高めている。

 自らが企画運営し、自作のドレスを披露するファッションショー「シルクガールズ・コレクション」(11月23日)に向けた準備が本格化しようとしている今、彼女たちは「私たちは庄内という地域を知った上でドレスをデザインすべきだと思う」と話す。そして「庄内の風土や歴史、自然を、私たちが作るドレスでどのように表現すればいいのだろう」と悩む。

 活動を通して自分が生まれ育った庄内という土地を知り、歴史を学び、人と出会う。そして何かを感じる。「庄内とは何か」。彼女たちは、この問いに自分なりの解釈を獲得することからガールズ・コレクションで発表するドレスのデザインを始める。デザイン画で引く1本の直線にも、ドレスの滑らかな曲線にも「庄内」を表現したいと強く思っている。

 鶴岡中央高総合学科家政科学系列被服系3年の今野萌香さん(17)は昨年、初めてファッションショー「シルクガールズ・コレクション」の舞台に立った。その経験は「自分たちは鶴岡シルクの情報を発信する立場にある」という自覚と責任を芽生えさせた。「鶴岡シルクのことを山形の人にも全国の人にも、もっと知ってほしい。私は鶴岡シルクを誇りに思っています」。今野さんはシルクガールズの活動を通し、自分が生まれ育った地域に誇りを見つけ出した。

 「庄内の美しい自然や空気を表現したい」。同じ3年生の佐藤綾夏さん(17)は、秋のコレクションで発表するドレスのデザインについて、こう構想している。昨年の3年生は、特産のメロンや鶴岡市の花「桜」の草木染という手法で「庄内」を表現した。今年はそれとは違ったアプローチに挑戦することで先輩たちを越えようとしている。

 「ドレスは、庄内という地域を知った上で作るべきだと思っている」。3年中瀬早香子さん(17)は、その確信は得ているものの、どう表現すればいいのか―その答えは見つかっていない。「庄内は広い。まだ行ったことがない所がたくさんある。実際に足を運び、その場に立って何かを感じてみたい」。3人は実際に足を運び、何かを感じ取ることでデザインのヒントを得ようとしている。

 シルクガールズプロジェクトを担当する同校教諭の溝江郁子さんは「これまでの伝統から、新しいシルクガールズが生まれるのではないか」と話し、高い意識を持って活動をしている彼女たちの姿に手応えを感じている。溝江教諭は「生徒たちにとって庄内は土台。切り離すことはできない」と、「地域」を常に意識させる指導を心掛けている。彼女たちはシルクガールズの活動を通して古里と真剣に向き合い、突き詰め、それを「ファッション」として表現している。

 2010年にスタートしたシルクガールズの活動を、立ち上げ当初に担当した鶴岡市職員は、初代リーダーの生徒が発した言葉を忘れることができない。初年度の活動報告のため市役所を訪れたその生徒は、市の幹部を前にこう述べた。「鶴岡がこんなにいい所だったということを知らなかった。大人になったら地域にお返しをしたい」。地域を知ることからシルクガールズの活動が始まることは、9年目を迎えた今も変わっていない。

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