山形再興

>>山形新聞トップ >>山形再興~トップ >>第1部・先端研究の求心力 鶴岡サイエンスパーク(2)

山形再興

第1部・先端研究の求心力 鶴岡サイエンスパーク(2)

2018/1/4 15:43
田園が広がる集落に開設した農村カフェ「イロドリ」。今後、3店舗の新規展開を計画している=鶴岡市豊田

 「交流」の機能を備えたホテルや子育て支援施設を相次いで着工させ、昨秋には田園に囲まれた集落の一角で農村カフェの経営を始めた。今年は、求人情報サイトを開設し、農場の経営にも乗りだす。一つの企業が行っているこれらの事業展開には、どのような脈絡があるのだろうか。慶応大先端生命科学研究所を核に、多彩なバイオベンチャー企業が集積する鶴岡市のサイエンスパークの開発を目的に創業した「YAMAGATA DESIGN(ヤマガタデザイン)」は、次に何をやり出すのか予測困難な企業だ。

 一見、関連性がないように見える同社のさまざまな事業には、「まちに必要な施設や環境を整える」という普遍の横串が貫かれている。「ホテルも子育て支援施設もカフェも求人情報サイトも農場も、すべては人を集める装置であり、まちの未来のために『必要だから』造るんです」と山中大介社長(32)は話した。

 「ビジネスでもシティーでもないコミュニティーホテル」として今夏にオープンする宿泊滞在複合施設「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE(ショウナイ・ホテル・スイデン・テラス)」も、今秋に完成する子育て支援施設「KIDS DOME SORAI(キッズ・ドーム・ソライ)」も、人と人との新しいつながりをつくり出す「まちづくりの装置」と位置付けている。

山中大介社長(右)が次々と展開する新規の事業に、四ツ井栄治さん(左)は魅力を感じ、転職を決めた=鶴岡市

 開設準備が進む庄内出身者のための求人情報サイト「SAKURAMASU(サクラマス)」はUターンを促すことを目的とし、鶴岡の郊外にある田園地帯に整備した農村カフェ「IRODORI(イロドリ)」は地元食材を使った料理を提供し、日常的に「食の都庄内」を実感できるカフェを目指している。今後「海」「山」「川」をそれぞれのテーマにしたカフェレストラン3店舗を新たに開設する計画だ。

 「イロドリ」がある鶴岡市豊田地区では今夏、農場経営が始まる。ハウス12棟を整備し、露地ものと合わせて通年での野菜栽培に取り組む。冬を含めた1年を通してヤマガタデザイン発庄内産の野菜が地元の人たちの口に入る仕組みを構築し、庄内圏域での「100%自給率」(山中大介社長)を目指す。

 同社の設立目的は当初、サイエンスパークの整備と開発だった。2014年の創業から3年を経た今、サイエンスパークを起点とした「庄内のまちづくり会社」(山中社長)へと変貌し始めている。

 「面白い人材は、面白い仕事に集まってくる」。山中社長はそう思っている。その言行通り、同社には全国各地から多彩な人材が集い、山中社長以下25人だった従業員数は昨年末までに34人に増え、今年中には80~90人になる予定。来年には100人を超える見通しだ。

 昨年11月に入社した四ツ井栄治さん(31)は大分県出身。広島市にある会計事務所を辞め、鶴岡出身の妻明奈さん(29)、長女杏奈ちゃん(2)とともに移住した。いわゆる「嫁ターン」だ。転職先として同社を選んだ理由の一つについて「面白いことをするのではないかという期待があった」と話した。

 新しいことに挑戦できる「面白い仕事」には、都市か地方かという枠を超越して人を吸い寄せる強い吸引力が備わっている。

[PR]
[PR]