医療先進都市の実像~ロチェスター訪問団報告

>>山形新聞トップ >>医療先進都市の実像~ロチェスター訪問団報告 >>医療先進都市の実像~ロチェスター訪問団報告(7) 巨大プロジェクト

医療先進都市の実像~ロチェスター訪問団報告(7) 巨大プロジェクト

2017/6/14 10:27
ロチェスター市街地の模型などを視察する団員ら。DMCはミネソタ州肝いりの計画だった=米ロチェスター市・DMC経済開発局

 「ミネソタ州の歴史上、最も大きなプロジェクトだ」。米ロチェスター市の大規模再開発計画「デスティネーション・メディカル・センター(DMC)」に取り組む経済開発局のパトリック・シーブ局長はそう言って胸を張った。米国屈指の総合病院メイヨークリニックの持つ力と雇用能力を最大限活用し、まちの活性化につなげること。それが彼らの仕事だ。

 今後20年間、巨大プロジェクトにつぎ込む予算は膨大な額に達する。メイヨークリニックは約3850億円を拠出し、州や市などは合わせて約643億5千万円を予算化する方針を示している。さらに、民間から計約2310億円の投資を集めるという。

 DMC経済開発局は州の予算を受けて活動する民間団体。シーブ局長は州都セントポールの元副市長という経歴を持つ。それだけでも州の本気度がうかがえる。「2年間かけてプランを練った。ロチェスターは健康を求める人でにぎわう世界一の街になる」

 壮大なプランを掲げる「デスティネーション・メディカル・センター(DMC)」構想だが、その中核となる総合病院メイヨークリニック側にも、もちろん思惑はある。それは病院間の競争だ。ライバル関係にあるクリーブランドクリニック(オハイオ州クリーブランド)、ジョンズホプキンズ病院(メリーランド州ボルティモア)などをしのぐためにも、インフラを整備し、都市全体で成長することが必要だった。

DMCが描く20年後のロチェスター市。メイヨークリニックを中心に大規模な再開発が進む(DMCパンフレットより)

 DMCのプランはメイヨークリニックを核にしたロチェスター市中心部のほか、経済発展の鍵を握る研究・教育・技術革新の区域などと、市内を分割するような形で構成されている。メイヨークリニックが生み出す技術などを活用し、30社以上の創業を見込み、今後20年間で3万5千人の雇用創出を狙う。

 DMC経済開発局で行われた訪問団との懇談で、パトリック・シーブ局長はプランを説明しながら、何度か次のフレーズを口にした。「若者をどうやって引き付けるか」。山形のまちづくりに対するアドバイスを求められた際も重要なポイントとして挙げた。「都市間競争に勝つには、若者が来たくなるようなまちにしなければならない。日本は高齢化が進んでいると聞いているので、米国以上に考える必要があるのでは」

 DMCの計画では、若者を引き付けるアイデアとして(1)大学教育の機会を増やし、高校卒業後に市外に出るのを防ぐ(2)若者に対し、市の将来像を伝える(3)公園や劇場などを造り、若者が住んで楽しいと思える街にする-ことを考えたという。高層のコンドミニアム(分譲式マンション)などを建設するほか、周辺の住宅の改築も進め、市街地に通勤・通学用の駐車場整備も進めていると説明した。

 佐藤孝弘山形市長は視察後、「まちづくりに関わる人たちの話を聞き、(ロチェスター市と山形市)それぞれの強みと弱みがよく分かった」とし、「山形の強みを生かし、医療を中心としたまちのブランド化、活性化を目指すには、さまざまな手があると思う。さらに取り組んでいきたい」と語った。

[PR]
[PR]