米ミネソタ州最大の都市ミネアポリスは活気にあふれた街だ。国際空港を玄関口として持ち、東に隣接する州都セントポールと合わせてツインシティー(双子の都市)と呼ばれる。野球のミネソタ・ツインズ、バスケットボールのミネソタ・ティンバーウルブズなどがここを本拠地にしており、街中でスポーツを楽しむ雰囲気がある。
その中心街のビルの一角にメイヨークリニックの関連企業「メイヨークリニック・スポーツ・メディシン」がある。ロビーには三つの盾を模したメイヨークリニックのロゴマークが、誇らしげにライトアップされていた。ここは病院本体の先進的な研究を活用し、アスリートの能力を高めることを目的にしている。
プロチームと契約を結んでおり、磁気共鳴画像装置(MRI)や再生医療の設備も整う。担当者は「何よりも正確な診断が大切。今日の試合に出場できるかどうかの判断が必要だから」という。さまざまな最新鋭のトレーニング機器も整備され、一般にも開放されている。だが予約制で15分約8800円。トレーナーが付きっきりで指導するとはいえ、決して安くはない。
メイヨークリニックのロゴマークは三つの盾を模しており、それぞれ臨床、教育、研究を表している。臨床はチーム医療を中心にレベルを高め、教育は医師だけでなく、市民も医療・健康管理のための教育を受けられる機関になることを目指している。研究機関としても名高いが、そこでは山形市出身で山形大医学部付属病院から留学した冨田恭子さん(36)がリサーチフェローとして働いている。
冨田さんは内科、特に肝臓の専門医。2015年4月からメイヨークリニックの消化器・肝臓分野のグレゴリー・J・ゴレス医師の研究室で、主に脂肪肝に関する基礎的研究を続けている。研究室のメンバーは多国籍で生粋の米国人は半分もいない。「脂肪肝は運動療法以外、これといって有効な治療法がない。最終的には運動療法に代わるような新たな治療薬を見つけるのが目標」と語る。
その研究環境は日本とは大きく違う。メイヨークリニックで冨田さんは臨床を担当せず、研究漬けの日々を送っている。「基礎研究は米国の方がシステム的に進んでいて、余裕を持って研究に打ち込める」と言い、「日本は患者を診ながら空いた時間で研究を進めるのが主流だが、こちらは人によっては8~9割を研究に割ける」と説明する。
冨田さんの一日は通常、午前8時からのカンファレンス(会議)から始まり、昼食を挟んで午後も研究やミーティングを重ねる。昼食時間も無駄にならないように、無料の軽食付きのセミナーが毎日のように開かれる。業務終了は午後5時。「残業する人は少なく、みんなさっと帰る」
留学期間は今年8月まで。「少し(日本に)帰りたくない気持ちもある」と冨田さん。ロチェスター市は治安が良く、住みやすいという。「冬は非常に寒く、マイナス30度まで下がるときがある。でもスカイウェイ(空中回廊)などで病院周辺は結ばれているので、医師も患者もコートを着ずにアクセスできる」。空中回廊は、同市が進めるまちづくりのポイントの一つになっているようだ。