やまがた農新時代

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やまがた農新時代

第6部・環境保全型農業(8) 生活クラブやまがた

2014/11/25 14:34
共同購入したタマネギを必要な分だけ取り分ける「生活クラブやまがた」の組合員たち=山形市城西町4丁目

 夕暮れが迫る山形市城西町の住宅街。1軒の民家の軒先に顔なじみの主婦たちが集まる。足元には箱詰めされた野菜や鶏卵、豚肉など複数の食材。「この前買った小松菜。日持ちが良くて、ずっと緑色」「豚肉がおいしい。夫に出したら違いに気付いた」。会話を弾ませながら、各自が持ち帰る食材を手分けしていく。

■納得いく価格

 集まったのは、「生活クラブやまがた生活協同組合」(米沢市)の共同購入を利用する組合員。7世帯が加入する「城西12班」をまとめる山崎敏子さん(42)は、組合員歴7年ほど。この日共同購入した農産物の一つ、北海道産タマネギ10キロは税込みで1500円程度。生産者の名前と写真、農薬使用量を慣行栽培の3分の1に抑えたことなどを記した便りが添えられていた。「生協の配送で購入すると『(価格が)高い』という人もいるけど、スーパーとそう大きく変わらない」と印象を語る山崎さんは「確かにスーパーの特売品に比べれば高いが、生産者や(農産物を育む)土地の代金と考えれば納得もいく」と笑顔を見せた。

■購入する支援

 環境負荷を考慮し、化学肥料や農薬を一切使わない有機栽培、慣行栽培で用いる農薬などの使用量を半分以下に抑える特別栽培。安全安心を提供したいという生産者の取り組みに対し、消費者は購入という形で支援できているだろうか。生活クラブやまがた代表理事の高橋尚(たかし)さん(52)は「有機、オーガニックがいいと考えていても生産者、消費者ともに『相手の顔が見えない』というのが現実。両者が分断した結果、手間をかけずに生産できる物、安価な物が市場にあふれた。消費者の目が肥えてきた一方、デフレ下の安売り合戦で食材を選ぶ基準があいまいになってきているのではないか」と指摘する。

■「安価」と決別

 国産品にこだわり添加物、遺伝子組み換え作物などの排除を掲げる生活クラブやまがたは、店舗経営をせず、宅配事業に特化する。エリアは村山、置賜両地域。週に1回、決まった曜日に食材と次回注文に合わせたカタログが届く仕組み。受け取りは4人以上の班配達と個人配達がある。班配達の場合、一定の値引きサービスを受けられる。取り扱う食材は多彩で、全国のネットワークを活用するとともに県産品にこだわった地産地消にも力を入れる。また、牛乳瓶をはじめ卵を入れた容器など再利用にも取り組む。

 組合員世帯数は本部を置く米沢市を中心にした置賜地域が約6500、村山地域は3千程度で山形市内が2千以上を占める。現在の状況について、高橋さんは「遺伝子組み換え作物が騒がれた20年ほど前、扱う食材を大きく見直した。より安全にこだわり、単に安価な物とは決別した。その結果、離れた組合員は少なくない」と説明する。

 山形市松見町にある山形支部で20日、組合員の交流会が開かれた。参加者の一人はこう強調した。「価格が安い物には安い理由があるはず。逆に高い物もそう。私はごまかしのない食材がほしいだけ」

(「やまがた農新時代」取材班)

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