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第5部・飼料用米の可能性(4) 地域完結型流通(上)真室川

2014/9/24 10:37
JA真室川が町内産のコメから製造しているもみ米サイレージ(SGS)。発酵して甘い香りがする=真室川町・秋山牧場

 全国有数の飼料用米の作付面積を誇る本県には、飼料工場がない。そのため収穫後にいったん県外の工場を経て、県内に餌として届く飼料用米も少なくない。県外に運ぶ分、輸送代が餌代に加算される。一方で真室川町では、飼料用米を町から出さずに加工し、地元の牛に与える地域完結型の流通が確立されている。

 ■「SGS」に加工

 中心となるのはJA真室川。農家は収穫した飼料用米を生もみのまま持ち込む。乾燥、調整の手間はない。JAは1キロ8円で買い取り、プレスパンダー(もみ殻蒸砕膨軟化装置)で加熱破砕、水と乳酸菌を加えて発酵させ「もみ米サイレージ(SGS)」に加工し、町内の和牛繁殖農家と酪農家に提供している。

 町でSGSの取り組みが始まったのは2008年。水田転作面積の緊急配分(60ヘクタール)、配合飼料価格の高騰などがきっかけだった。SGS用の作付面積は当初の6.6ヘクタールから11年まで毎年倍増。いったん減少したものの今年は80農家が70ヘクタールに栽培している。

 栽培農家の柿崎喜平さん(63)=大沢=は昨年の4倍超の約90アールで多収性専用品種「べこごのみ」を植えた。主食用米価格が下がる中で「冷たい沢水が流れ込む田だが、病気に強く収量が確保できる。手厚い補助金制度(10アール当たり8万円)がある飼料用米に可能性を感じる。来年は作付けをさらに拡大したい」と考える。

SGSを母牛に、SGSを基に作った発酵完全混合飼料(TMR)を子牛に与えている高橋直樹さん=真室川町・ヤマタ畜産

 JAは今年SGSを630トン製造し、畜産農家13戸の700頭に与える。プロジェクトを担当する同JA営農販売課畜産販売係長の丹康之さん(34)は「一般的に配合飼料を繁殖牛ではSGSに100%、乳牛でも30%置き換えられる」と説明する。飼料用米は町外に出ないため、保管や流通経費の負担が軽く、SGSは1キロ23円に設定。消化吸収される養分量換算で、価格は配合飼料の半分となり、畜産農家にとってコスト削減効果は大きい。

 ■餌やり一度で

 昨年からはSGSをベースに、子牛用の餌「発酵完全混合飼料(TMR)」の製造にも乗り出した。今年は90トンの出荷を予定している。通常、子牛用の餌はトウモロコシなどの濃厚飼料と、牧草、わらなどの粗飼料を分けて与える。発酵TMRは、SGSにタンパク質を補うための大豆や牧草が混ぜてあり、餌やりの作業が一度で済み省力化につながる。体重300キロの子牛に与える餌代を比べてみても、配合飼料と粗飼料の場合は1日計530円だが、発酵TMRは360円と割安だ。

 繁殖牛140頭、子牛80頭、乳牛19頭を飼うヤマタ畜産(川ノ内)では、当初からSGSの取り組みに参加している。繁殖牛に与える配合飼料を、産前産後以外は全てSGSにした。高橋直樹社長(42)は「SGSを与えると粗飼料をよく食べる。さらに子牛の餌を発酵TMRにしたことで、作業の手間が軽減された」と話す。乳牛に与える配合飼料も8割をSGSに代えたが「十分な乳量を確保できている」と笑顔を見せる。

 ■町自給率87%

 町では飼料用米だけでなく、転作田などで牧草(220ヘクタール)稲発酵粗飼料(WCS、16ヘクタール)青刈りトウモロコシ(12ヘクタール)を栽培している。JAによると町の飼料自給率は12年で87%と、全国平均の26%を大きく上回った。耕畜連携で、畜産農家から出た堆肥を飼料作物の農地にまく循環システムもできている。

 12年2月には町秋山牧場で農家が周年、牛を預けられる畜舎の運用が始まった。約200頭を受け入れ、畜産農家が経営規模を拡大しやすい環境も整った。JAと町は繁殖牛を現在の約620頭から千頭に、肥育牛を100頭から500頭に増やす目標を掲げる。「JAはSGSを使った肥育牛用の新飼料開発も進めている。町で生まれた牛を町内産の餌で肥育することで、ブランド化を目指したい」と丹さん。SGSを核にした挑戦は続く。

(「やまがた農新時代」取材班)

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