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やまがた農新時代

第3部・スタート(9) 農業大学校で学ぶ

2014/5/28 10:00
田植え機を操り、実習に取り組む片山祥平さん=新庄市・県立農業大学校

 新庄市南部の田園地帯にある県立農業大学校(大江栄悦校長)。本県農業を支える人材育成を目的に、前身の県立農業試験場経営伝習農場が1955(昭和30)年1月に設立された。特色は少人数の実践教育。広大な敷地に校舎や学生寮、実習圃場があり、6学科の1、2年生計114人が全寮制で学ぶ。

 農家、非農家と学生の出身はさまざまだが、この数年、卒業生の就農率は4~5割で推移。それ以外の学生も大半がJAなど農業関連に就職する。一方就農する学生のうち、4割近い学生は農業法人への就職を選択。非農家出身者にその傾向は顕著だ。

■現実的な選択

 「入学前から農事組合法人への就職を目指していた」と語る稲作経営学科2年片山祥平さん(20)=白鷹町出身=は非農家出身。親元へ戻り農業に携わる学生と違い、就農しようにも「土地はない、資金もない、ノウハウもない」。収入が安定しないことへの不安もあり「法人就職は現実的な選択だった」という。

 サラリーマン家庭で育った片山さんが農業を志したのは、中学2年時のインターンシップがきっかけだ。農事組合法人で農作業を体験し、野菜を作る楽しさに目覚めた。「苦労した分だけ報われる。収穫の喜びは他の仕事では決して味わえない」と農業の魅力を語る。

実習に取り組む渡辺謙太郎さん=新庄市・県立農業大学校

 「より高く売れるコメを作る」ことを考え、有機栽培による稲作を思い描く。就職が内定している法人は有機栽培を手掛けていないが「積極的に提案したい」と語る。農家レストランや産直の運営にも携わりたいといい「生産から消費まで自分の目で見届けたい」。夢は広がる。

■6次産業化を

 一方、農家出身の学生は親元に戻り就農するケースが多い。実家がスモモを中心とした果樹、コメなどを生産する農産加工経営学科1年渡辺謙太郎さん(18)=大江町出身=は、農産物の6次産業化を視野に、加工などを学ぶ同学科を選んだ。目標は「生産から加工、販売まで手掛ける農家」。収入が安定しないといわれるが「頑張り次第で何とでもなる。日々作物が成長する姿を見ることができ、楽しい仕事ですよ」と訴える。

■「女性」を生かす

果樹園で実習に取り組む佐藤綾香さん=新庄市・県立農業大学校

 女性の入学者も年々増え、2014年度は在校生114人中33人が女性だ。果樹経営学科2年の佐藤綾香さん(20)=高畠町出身=もその一人。実家は稲作と果樹の複合農家だ。物心ついたころから家業を手伝っていたためか、就農に「迷いはなかった」。

 父親には「おまえには無理だ」と反対されたが「父の代で農業を終わらせたくなかった」。説得が通じたのか、今では父親が「早く戻ってきて手伝え」と言うまでに。「女性目線で売れる商品作りをしたい」と話す。

 農家や農業経営を取り巻く環境は厳しさを増しているが「食べて喜んでくれる消費者がいるからこそ、来年も頑張ろうと思える」。片山さんのこの言葉にこそ、彼らの原動力が隠されている。

(「やまがた農新時代」取材班)

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