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やまがた農新時代

第3部・スタート(4) 耕作放棄地の再生

2014/5/22 09:44
耕作放棄地を農地として整え、スイカを栽培する準備を進める須藤利弘さん=寒河江市高屋

 農家の高齢化、後継者不足による耕作放棄地の拡大が県内でも深刻な問題となる中、新規就農2年目の須藤利弘さん(38)は寒河江市高屋の耕作放棄地を再生し、スイカ栽培に挑戦している。「耕作放棄地は最初からつくり上げて『自分の畑』にすることができる。時間はかかるかもしれないが、農地をよみがえらせたい」と意欲を燃やす。

■スイカの栽培

 農林業センサスによると、県内の2010年の耕作放棄地は5年前から646ヘクタール増え、7443ヘクタールとなった。1990年の3214ヘクタールと比べ、2.3倍に上る。寒河江市の耕作放棄地は11年で80ヘクタール。前年から8ヘクタール増えた。同市農業委員会は11年11月にプロジェクトチーム(PT)を設置。初年度は耕作放棄地約20アールを所有者から無償で借り受けジャガイモ畑に再生し、農家に貸し出した。須藤さんがスイカを栽培する畑の再生もPTの取り組みの一環だ。

■「毎日が冒険」

 須藤さんは高校卒業後、都内で板前修業などを経て帰郷し、運送業に就いた。農業に興味を持ったのは、「あぐりヘルパー」として西村山地方の農家の手伝いをしたことがきっかけだった。「毎日が冒険のような日々に引かれた」

 12年、市内の「つや姫」生産者が協力してブランド産地形成を目指す「つや姫ヴィラージュ(村)」の村長・土屋喜久夫さん(60)に“弟子入り”し、サクランボの栽培技術や経営手法を学んだ。同時に大江町の農家からスイカ作りを教わった。

 農地を貸してくれる人を見つけるために「研修中、地域の農家の人たちに顔を覚えてもらおうと、フォーラムや研修会などに積極的に参加して、何が栽培したいかアピールした」。約80アールを借りることができ、13年に独立就農、スイカとサクランボを手掛けた。

 土屋さんが農業委員を務める縁で、耕作放棄地の再生の話が回ってきた。もともとリンゴとブドウが植えてあった約65アールの畑は10年近く人の手が入っておらず、一面野バラに覆われていた。さらに地中には崩れたブドウ棚の針金やパイプが埋まっていた。「想像以上の荒れ地だった」

 今年4月中旬からPTの農家の協力を得て、重機を使って土を掘り起こし、抜根。伐採したリンゴやブドウの木をチップ化して肥料としてまき、土壌を改良した。1カ月かけて、苗を植える準備を整えた。

■出会った人々

 耕作放棄地での栽培は、満足する収穫に結び付かないリスクもはらむ。須藤さんをサポートする土屋さんは、地元とつながりがない新規就農者が農地を借りる難しさを指摘した上で「耕作放棄地だった農地の再生に取り組むことで、周囲の信頼が得られる。その信頼が今後の農地の拡大につながる」と強調する。須藤さんは「どれだけ収穫できるか不安がある」としながらも「出会った多くの人たちのおかげでここまで来られた。耕作放棄地でのスイカ栽培を通して、恩返しをしていきたい」と続けた。

(「やまがた農新時代」取材班)

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