やまがた観光復興元年

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やまがた観光復興元年

第10部・全国とどう戦うか[9] 意見交換(中)

2014/12/28 11:54

 インバウンド(海外からの旅行)を取り込むためには何が必要か。日本への外国人旅行者は急伸しているものの、東京、大阪、京都や北海道に集中。東北はいまだ東日本大震災前の半分程度の水準だ。山形県としての戦略の欠如を問題視する声が多数聞かれた。

山口敦史氏

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問も務める全旅連の佐藤会長は「このままでは、五輪で日本への外国人旅行者が増えても、山形に来るかは疑問。本県が国を挙げた一大イベントにどのように関与していくか、将来どの程度まで外国人旅行者を増やしていくのか、根本的な指針を定め、行動しなければならない」と語った。

 天童温泉や飯豊町の旅館、観光協会などは、独自に連携して海外プロモーションを展開している。全旅連の山口青年部長は全県的な事業の必要性を強調。「本県は、『つや姫』など個別ブランドの売り込みはうまいが、県全体をブランド化したPRは弱いように思う。本県そのものをブランド化し、誰に、何を、どう売るのかを決め、戦略的に発信することが重要だ。現在、主要ターゲットにしているアジアと合わせ、欧米にも売っていかないと、他の地域の二番煎じになってしまう」と警鐘を鳴らした。

中原浩子氏

 東北公益大の中原特任講師は「特に欧米に支持されると感じるのが山形の精神・生活文化や歴史。観光資源として生かすには、それをしっかりと伝えなければならない」と続いた。

 台湾などから観光客を多く受け入れている飯豊町観光協会の二瓶さんは効果的な情報拡散の手法として、大容量データを高速通信できる公衆無線LANサービスWiFi(ワイファイ)環境の整備を挙げた。「外国人旅行者にとって便利になるだけでなく、フェイスブックなどで無料で世界に情報発信してもらえる」。チャーター便の運航に対する行政支援の重要性も訴えた。「花巻空港での岩手県など、チャーター便運航への助成強化でインバウンドを伸ばす自治体もある。支援によって海外からの入り口を開いてほしい」

二瓶裕基氏

 行政に対しては縦割りの撤廃や長期的な視点を求める意見が多かった。山口青年部長は「これは観光課、それは農政課と分けるのではなく、各課が連携し、または連携する部署をつくり、一体となった観光振興策が必要。1、2年で成果が出ないと議会に指摘されるとして表面的な事業ばかり展開しては観光立県は実現できない。次世代を見据え、長期的で本県独自の施策を打ち出す必要がある」とした。

 入湯税や看板の規制に関する意見も。本県全体の入湯税は2012年度で5億9140万円。「本来、温泉街の整備などに使われる目的税だが、温泉街に全額は還元されていない。還元されれば市町村単位でも相当の観光振興事業ができ、地域活性化につなげられる」と山口青年部長。二瓶さんは「景観への配慮から看板や案内板を一定程度規制するのは理解する。しかし見つけられない案内しか設置できないのでは意味がない。柔軟に対応すべきだ」、中原特任講師は「案内板だけで周遊できる地域にするのが本当のおもてなし」と強調した。

【出席者】(順不同)

▽やまがた花回廊キャンペーン実行委員会委員長

 内藤文徳氏

▽全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)会長

 佐藤信幸氏

▽同青年部長

 山口敦史氏

▽村木沢あじさい営農組合組合長

 開沼雅義氏

▽東北公益文科大特任講師

 中原浩子氏

▽飯豊町観光協会職員

 二瓶裕基氏

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