やまがた観光復興元年

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やまがた観光復興元年

第4部・変わる情報発信[5] 紙媒体の活用

2014/4/23 10:40
観光情報誌が並ぶ書店。村山地域の市町は別冊とじ込みを活用し、消費者に情報を届けようとしている=山形市・八文字屋本店

 村山地域7市7町で組織する「めでためでた♪花のやまがた観光圏」は、大手旅行情報誌「じゃらん」(リクルートライフスタイル)をパートナーに選んだ。毎月発行の関東・東北版に、2012年秋から定期的に別冊とじ込みを入れている。有料の情報誌に照準を合わせたのは、その先に「お金を払ってまで旅の情報を求める消費者」がいるからだ。

 「従来の観光パンフレット制作の手法では、情報が欲しい人に届けられているかが疑問だった。これなら旅行に行きたい人にピンポイントで届けられる」。事務局のある山形市で事業を担当した青木哲志観光物産課長補佐(52)は言う。「関東・東北じゃらん」の発行部数は月約11万5千部。それだけの人に直接売り込めることを意味している。

 12年10月号に秋ガイド(8ページ)を、13年2月号には冬あそび(12ページ)をとじ込んだ。それ以外に事業費の中で、地元での無料配布用に1万部を印刷してもらえるのも特徴。発行から一定期間経過後はイベント情報や料金などの細かな変更をして増刷できる。季節ごとに一度作れば、翌年以降も完成度の高い冊子を活用し、観光客を呼ぶためのPRと、来てから周遊してもらうためのPRの両方が可能になる。今年7月号(6月1日発売予定)には夏あそび情報をまとめた別冊をとじ込む予定だ。

 費用は1回当たり約600万円。花のやまがた観光圏の予算に、掲載量が多かった市町が上乗せして毎回負担している。単独市町での捻出が難しくても、広域で連携することで事業実施が可能だ。

大手旅行情報誌への別冊とじ込みや新聞の別刷り広告特集など紙媒体を使った情報発信はさまざまな手法がある

 大手旅行情報誌「じゃらん」との連携は、県内でほかにも例がある。地域ごとの観光情報をまとめた「ご当地パンフレット」の制作だ。リクルートライフスタイル(東京都)のじゃらんリサーチセンターが2011年度から手掛け、これまでに全国で110冊超が発行されている。「じゃらん」という知名度の高いロゴが入ることもあり、市町村などが独自に制作したパンフレットよりも観光客が手に取る傾向があるという。

■冊子手に周遊

 県内では南陽市が12年度に8ページの冊子を制作。今年3月には村山市が「ご当地メン対決!そばVSラーメン」を主軸にした8ページを発行した。村山市のケースは10万部を作成。編集関連費用が150万円、地元業者による印刷費が100万円で、市単独で実施した。冊子を手に市内を周遊する観光客も出始めている。

 村山地域では、山形新聞と河北新報に同時に折り込まれる別刷り広告特集「山形百彩」(山形新聞発行)を活用した情報発信も行われている。雛街道や地酒巡りなどを特集し、季節ごとに年4回各20万部を発行。仙台市内の河北新報に10万部、村山地域の山形新聞に6万5千部を折り込み、3万5千部を県内の観光施設や県外の金融機関、スーパーなどで配布している。

 観光や買い物などで交流が盛んな両地域に県境を越えて同時に発信できるのが最大の特徴。新聞を購読する幅広い消費者と、観光施設などを訪れる観光客に同一媒体で情報を届けられる点もメリットだ。ページ数は16。保存に便利な別刷りで、観光施設や飲食店が数多く広告出稿する。毎回出稿しているきらやか銀行(山形市)の担当者は「観光情報冊子の一部に広告が入る内容のため単体の広告より目にしてもらう確率が上がる」と話す。

■ニーズ把握も

 県村山総合支庁観光振興室に事務局のある「やまがた広域観光協議会」は年2回計100万円を投じて山形百彩を活用する。ラーメンやそば店などを数十店舗集めて紹介してきたが、アンケートを通じて消費者ニーズを把握できる点を特に評価する。食事券などプレゼントの応募と合わせて実施しており、回答数は毎回1000~1500。仙台圏で山形のスイーツへの関心が高いことが分かると、別の回でスイーツ特集を組み、結果を生かす。

 協議会がベースとなる広告予算を負担するため、各個店は通常より安い費用で広告を出すことができ、地元事業者の支援にもなる。担当者は「個別に掲載するより効果が大きい。ラーメンやスイーツなどジャンルごとに数十店舗をまとめて紹介することで地域ブランドの形成にもつながる」と手応えを口にした。

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