「観光」の語源は、中国の古典・易経の「国の光を観る」にあるといわれる。山形には、日本人の心の奥底にある故郷を思い起こさせる美しい風景や、脈々と受け継がれてきた伝統文化、豊富な食、温かい人情といった光り輝く素材がある。2014年、県内では国内最大規模の観光誘客事業デスティネーションキャンペーン(DC)や東北六魂祭、全国育樹祭など大型事業が相次いで展開され、本県観光を飛躍させる絶好の機会を迎える。
景気低迷が長引く中で11年3月に起きた東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の風評被害で本県観光は打撃を受けた。その影響はいまだ払拭(ふっしょく)し切れていない。県内の豊かな素材と14年の好機を生かし、国(本県)にさらなる光を当てられるか。その分岐点に、われわれは立っているのではないか。
観光は、交通、流通、農業、製造業と多様な分野に波及効果のある裾野の広い産業だ。人口減少社会を生き残るため交流人口と消費を増やす観光振興は地域活性化に直結する。それはほかの地域にとっても同じ。15年春には新幹線が金沢(石川県)まで、16年には函館(北海道)まで延伸し、地域間競争はさらにし烈を極めるだろう。
旅行ニーズの多様化、個人客の増加で流れを呼び込むのが困難な時代だ。しかし、本県観光の柱になってきた温泉地も変わり始めている。原発事故の風評被害を受けた強い危機感から観光関係者が団結し、逆境を乗り越えようとする取り組みや地域間連携の動きが見えてきた。次世代を担う若者たちの新たな誘客事業も生まれている。
観光力を磨き、10年後、20年後を見据えた地域振興のためには今、何が必要なのか。山形新聞、山形放送の今年の8大事業「やまがた観光復興元年」で課題と道筋を探る。