鶴岡市出身の作家藤沢周平さんが、1997年1月に死去して今年で10年。下級武士や庶民の哀歓を描く作品世界は今もなお、多くのファンを魅了している。節目の年に合わせて、藤沢文学の魅力にさまざまな角度から光を当てる。山形市の作家高橋義夫さんが藤沢作品を一作ずつ選び、同じ創作者の視点から鑑賞する。鶴岡市出身の早稲田大名誉教授・中村明さんが表現技法を分析し、山形師範学校(現山形大)時代に同人雑誌で藤沢さんと一緒に活動した宮城学院女子大名誉教授の蒲生芳郎さん(長井市出身)が、個人的な交流を切り口に藤沢さんの生涯と作品をたどる。(2007年に本紙文化面に掲載した企画です。)
※荒蝦夷発行、山形新聞社編集の『没後十年 藤沢周平読本』より転載
藤沢作品 こう読む
- 【用心棒日月抄】 俳諧に通じるユーモア
- 【春秋山伏記】 方言駆使 身近な主人公
- 【義民が駆ける】 史実検証し疑問解く
- 【三屋清左衛門残日録】 料理の好み作品に反映
- 【回天の門】 庄内ならではの人物像
- 【蝉しぐれ】 農村の心、基層を描く
- 【一茶】 自己の半生語るように
- 【雲奔る 小説・雲井龍雄】 作品に青春の残り香
- 【橋ものがたり】 作者自身楽しんで書く
- 【隠し剣秋風抄】 「秘剣」がもつ娯楽性
- 【市塵】 新井白石―生き方にひかれ
- 【漆の実のみのる国】 人間鷹山 ありのままに
【執筆者】高橋 義夫(たかはし・よしお)氏は1945年千葉県生まれ。早稲田大卒。雑誌編集者を経て執筆活動に入り、86年から本県在住。92年「狼奉行」で直木賞。著書に、羽州松ケ丘藩の隠密が活躍する「鬼悠市風信帖」シリーズ、肘折温泉(大蔵村)を舞台にした「花輪大八湯守り日記」シリーズなど。2015年1月、最上義光の妹で伊達政宗の母・義姫を描いた「保春院義姫」を発行した。
表現散策十二景
【執筆者】中村 明(なかむら・あきら)氏は1935年鶴岡市生まれ。早稲田大大学院文学研究科修了。国立国語研究所室長、成蹊大教授、早稲田大教授を歴任。専門は文体論・表現論。主著に「日本語レトリックの体系」「日本語の文体」「笑いのセンス」「日本の作家 名表現辞典」「日本語のおかしみ」「吾輩はユーモアである」など。
生涯の追憶
【執筆者】蒲生 芳郎(がもう・よしろう)氏は1928年長井市生まれ。山形師範学校を経て東北大文学部卒。宮城県の高校教諭から宮城学院女子大教授に。2012年死去。著書に「森●外 その冒険と挫折」「漱石を読む」「●外・漱石・芥川」「藤沢周平『海坂藩』の原郷」など。
●は、鴎のメが品